ファインアートとジェンダーの歴史

 ジェンダー問題はいつも美術史の大きな議論点である。偉大なアーティストの名前を5人挙げるよういわれたら、誰を思い浮かべるだろうか。彼ら、それとも彼女ら。

 まず、芸術が西洋において、長い歴史のなかでキリスト教会や貴族のためのものから民衆のためのものへの転換期では、自由を手にした男性の画家たちは新しい芸術の流派を作って独自に展覧会を組織するようになった。一方、女性は手芸やピアノなどの習いごとがメインで、趣味の域を超えるプロ性はなかった。女性は、いつも被写体としての女性であった。印象派の女性画家はいるが、家庭など私的空間を描くのがメインだった。これはあくまでもここ200年の、「最近」の話だった。

 2019年の調査によると、日本国内の国公立美術館4館の所蔵作品における作家の男女比は、男性が78〜88%と圧倒的に高く、女性はわずか10〜13%にとどまっている。またアメリカの美術館・博物館18施設を対象とした調査では、ジェンダーが特定しうる個人作家のうち、所蔵作品全体における女性作家の割合は12.6%という結果に。

 有名な女性アーティストの数が圧倒的に少ない。しかし、美大の女子学生数は圧倒的に多い。彼女たちは卒業後どこで、何をしているのか。これまで女性アーティストの評価は何度も見直されてきたはずだが、なぜいまだに女性アーティストは少ないのか。ファインアートとジェンダーの歴史を今一度見直すべきではないか。 

 「女性の目線」で何かを描くこと、それを伝達することは、この時代において一般的だが、こうした現状を前に私たちには何ができるだろうかと一緒に考えるべきではないか。

参考:

​​https://www.ellegirl.jp/wellness/sustainable/a35899245/ellegirluni-naokoasano-21-0401/

美術学科
金 秋雨
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