授業:連携型プロジェクト -日藝ST-ART-UP- -産学連携による共創の一つの形-②

第1弾の記事では、「連携型プロジェクト -日藝ST-ART-UP-」の概要と授業の特徴を説明しました。本記事では、プレゼンの様子と教育効果についてご紹介します。

※産学連携の性質上、提案内容の詳細は割愛いたします(ごめんなさい!)。

第1弾 授業:連携型プロジェクト -日藝ST-ART-UP- -産学連携による共創の一つの形-①

1.ビジネスレベルの企画を

プレゼン当日、教室には緊張感が漂っていました。学生たちはグループごとにギリギリまで企画を追い込み、最後の仕上げをしていました。それぞれのチームに産学講師が1名ずつ「助っ人外国人(的な存在)」として伴走し、学生たちが企業にプレゼンをぶつける場を共に作り上げてきたのです。この場は、学生だけでなく講師も含めた「皆でクリエイションをする」場でした。

学生・講師が一緒に企画を追い込む様子

2.プレゼンとフィードバック

プレゼンには授業に関わっていない外部評価者も招き、ビジネス視点での評価を行いました。プレゼン時間は質疑応答を含めて15分。全班の発表終了後、個別に丁寧なフィードバックが行われました。評価の指標は「理解性」「新規性」「実行可能性」「収益性」「持続可能性」など、多角的な視点でシビアに行われました。

プレゼン風景
質疑の様子
全体プレゼン後のフィードバック

さて、全てのプレゼンが終わり、フィードバックの時間です。
外部評価者からは、「ビジネスアイデアがクリエイティブで新規性が高い」「日藝生はアウトプットに対して非常にストイックで、企画内容だけでなく資料やプレゼン方法も優れている」といった高評価が続出しました。

 

※繰り返しになりますが、産学連携の性質上、企画内容の詳細は紹介できませんが、いつか皆さんに私たちのビジネス企画が届くことを願っています!

3.学修効果について

 

最後に少し真面目な話ですが、教育の効果検証についてお伝えします。

第1弾の記事でも触れたように、私たちは「芸術大学における産学連携型授業」を追求し続けています。授業の実践経験や先行研究、講師間での議論を基に、今回の授業では、「産学の距離を縮める」「伴走的支援」という方針を取り、さらにSlackやPodcastといった新しいコミュニケーション手法を導入しました。

 

効果検証の一部紹介

 

大学では、新しい授業設計を行った後、その効果を検証し、次に活かすことが大切です。私たちは、学生の意識変化を測るために、学修目標に基づいた評価表(ルーブリック)を作成し、コメントペーパーを評価しました。今回は、その効果検証の一部を紹介します。以下のグラフ(表1)は、そのルーブリック評価の平均点(速報値)の推移を示しています。

表1 ルーブリックによる平均点の推移

グラフから、学生たちの「独自性の発揮」や「協働的姿勢」に関する意識が向上したことがわかります。特に、第2期(プレ・グループワーク期)と第3期(企業提案のためのグループワーク期)を比較すると、これらの意識の向上が統計的に有意であることが確認されました【注1】。

 

先行研究との関連

 

私たちの先行研究[1]でも、芸術大学生はコミュニケーションを通じて創造性が促進されることが示唆されています。今回の授業では、学生たちが「独自性を発揮」し、チームの中で「協働的姿勢」を高めることで、よりクリエイティブな成果が生まれたと感じています。

 

まとめと今後の展望

今回の授業を通じて、学生たちが新たなクリエイターとして成長していく姿を目の当たりにしました。特に、リアルなビジネスの場での学びが、学生たちの自己認識やチームワークの向上に大きな影響を与えたと感じています。今後も、この授業をさらにアップデートし、学生たちがより大きなステージで活躍できるよう支援を続けていきます。

 

また、今回の授業で得られたデータの詳細な分析結果は、今後の論文で発表予定です。

次回も、学生たちの成長の様子をお伝えしますので、どうぞお楽しみに!

引用文献
[1]「芸術的創造性におけるオンライングループワークの学修効果 ―学修者の特定の性格特性の視点から― 」加藤亮介, 吉野大輔,新行内康慈,芸術研究所紀要 (2023年号)
注1) 統計分析として、全授業出席者を対象に母平均の差の検定(対応がある場合)を行い、それぞれ、有意水準 5%有意、1%有意が確認された。
芸術教養課程
加藤 亮介
日本大学芸術学部 芸術教養課程 准教授 博士(芸術学) グローバルメディア・国内メディア企業にて、コンテンツ・ビジネス業務に従事、 その後、研究者となる。日藝では、芸術論から産学連携まで幅広く担当。
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