卒業生に聞く! テレビドラマプロデューサー 松本明子さん(2005年卒、所属:TBSスパークル)

東京ドラマアウォード2019 授賞式会場にて松本さんと中町教授

◆ 主なプロデュース作品
「オールドルーキー」(2022年、TBS)
「婚姻届に判を捺しただけですが」(2021年、TBS)
「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(2021年、TBS)
「恋はつづくよどこまでも」(2020年、TBS)
「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(2019年、日本テレビ)
「今日から俺は!!」(2018年、日本テレビ)
「ブランケット・キャッツ」(2017年、NHK)

中町綾子(以下、中町):松本さんがプロデュースしたドラマが多くの視聴者の支持を集めています。現在は、日曜劇場「オールドルーキー」が放送中です。ドラマのプロデューサーの仕事について聞かせてください。

松本明子さん(以下、松本):プロデューサーの仕事は、仕事の幅が広くて、企画から台本作り、キャスティングとスタッフィング、何にどうお金かけるかというのも全て決めます。宣伝もどんなポスターにするか、どんな宣伝施策を行うか細かいことも含めて全て決めます。最近では放送後も、配信用にディレクターズカット版を制作したりパッケージ版の制作があり全然終わらないです(笑)
個人的には何もないところから始める「0を1にする」のがプロデューサーの仕事だと思っています。

中町:以前、「コウノドリ」(2015年、TBS)の制作の時に、松本さんが赤ちゃんを探している、と聞いたのが印象に残っていますが。

松本:1話に必ず生まれたての赤ちゃんが一人は登場するので、ある時、Aちゃん(放送学科卒業生)の赤ちゃんにも出演してもらいました。生まれたての赤ちゃんなので責任重大で皆でケアします。赤ちゃんは、本番直前までスタジオに入らず控室待機、部屋にオムツやベッドなど完備して、万全の態勢で撮影していました。

中町:松本さんにとってドラマプロデュースの仕事の魅力、やりがいは何ですか?

松本:時々、「ドラマを見て泣きました」とか、「感動した!」とお手紙をもらえるんです。こんなに人から感想や意見を言ってもらえるお仕事ってなかなかないんじゃないかと思っています。

中町:印象に残っている手紙は?

松本:「ボス恋」(「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」2021年)、「ハンオシ」(「婚姻届に判を捺しただけですが」2021年)では、コロナ禍に見て、「癒された」とか、「元気をもらえた」、「夫と会話が増えた」というお手紙をもらいました。コロナで夫との会話が無かったけど、そのドラマの話で盛り上がったと書いてあると、やっぱり嬉しいですよね。

中町:家族の結びつきに貢献してますね。

松本:そうなんです。特に火ドラ(TBS・火曜10時のドラマ)をやっていて思いました。火曜ドラマはラブコメディが多く、笑って楽しめて胸キュンできる。コロナ禍に、ずっと在宅だと家族で喧嘩になることもありますし、そんな状況を少しでも緩和できることが嬉しいなと。
以前、震災の時はドラマの放送がしばらくなくなり、ドラマはこういう時に何も役立てないのだなと落ち込みもしましたが、在宅生活の時には少しでもエンタメとして楽しんでもらえて嬉しかったです。

中町:「恋つづ」(「恋はつづくよどこまでも」、2020年)は、まさにコロナ禍での放送でしたね。制作も大変だったのでは?

松本:撮影の途中で新型ウイルスの感染拡大が始まりました。そのクール(放送時期)には、病院を舞台にしたドラマが多く、突然ロケしていた病院が借りられなくなって困っているチームが多かったんですが「恋つづ」は引き続き貸していただけたんです。

撮影前は制作部(ロケ先を探す人)に病院内で恋愛するなんて企画じゃ誰も貸してくれないですよと怒られました。他のドラマは重厚な病院が舞台のヒューマンドラマが多く、取り合いになった時に勝てなかったようで。

でもOAが始まってからはお借りしている病院の方々がとても応援してくれて最後まで無事撮影をすることが出来ました。今でも本当に感謝しています。

中町:結果として、みんなが盛り上がれるドラマとして大きな話題になりました。「恋つづ」の脚本家は映画学科卒業の金子ありささんですね。

『婚姻届に判を捺しただけですが』の台本を手にする松本さん

中町:放送学科を受験したきっかけは?

松本:小学校6年生の時からテレビドラマの仕事をやりたいって思い続けていました。きっかけは「家なき子」(1994年、日本テレビ)です。テレビでこんな「喜怒哀楽を楽しめるドラマ」を見せてもらえるのだと。しかも無料で。自分も作ってみたいと思い続けて、高校に入ってから日芸の放送学科があるのを知り受験しました。

最初は、父に反対されました。でも芸祭(学園祭)に父と一緒に行き安心したようです。学内の雰囲気が明るくて真面目そうだったので。ただ就職については引き続き心配されましたけど。私自身、進学相談会で就職のことを聞くとフリーランスが多いと説明があり、高校生の私には想像できなくて。実際に業界に入ったら本当にフリーで働いている方が多くてマイナスなことではなかったです。

中町:大学時代はどう過ごしていましたか?

松本:放送学科に入りたくて受かって、嬉しくて、入ってすぐに映像制作演習の授業を選び、2年目からはテレビ制作コースを選択しました。映像系の部活にも入っていたので、そこで自主制作を撮ったりしました。その中で、制作のことや、制作する上でのコミュニケーションの取り方を学び、とても良い経験になったと思います。

最初に自主制作で撮った15分ほど作品が好評で、頑張って卒業制作をすることにしました。大学四年間の出会いがあったからこそスタッフも集まってくれて、無事1時間の作品を撮ることができました。(作品は)愛知万博でも上映され、JCF 学生映画祭でグランプリを受賞しました。カメラマンが映画学科の友人で、出品してみないかって言ってくれたんですよね。

中町:テレビドラマ業界を目指す人にメッセージをお願いします。

松本:私自身、少し後悔していることですが、自分の知識に凝り固まらずにいろんなことに目を向けていって欲しいなって思ってます。私自身は、本当にドラマのことばかりだったので。でも、自分がいざ就職の面談をする立場になって思ったのは、色んなことに興味がある人ってすごく魅力的だなと。どんな知識でもドラマでは役に立つ時期がきます!

あとは、簡単に諦めないでほしいなと思います。私は就活はうまくいかなかったので、他の業界も受けたりして、最初は諦めようと思ったんですが結果、諦めなくて良かったと思っています。もし少しでも興味があるなら、(仕事を)始めてみて、3本、とにかくやってみてください。必ず3本、連続ドラマの現場で働いてみて、そこでわかる人は楽しさがわかると思うので。

中町:ありがとうございます。

放送学科
中町 綾子
日本大学芸術学部放送学科教授。テレビドラマを中心に放送番組の批評活動を展開している。国際ドラマフェスティバル東京ドラマアウォードの選考やアジアドラマカンファレンス等の国際会議に参加するなど日本のテレビドラマの情報発信にも努めている。
OTHER TAGS