『SHOGUN 将軍』エミー賞受賞、真田広之さんへ向けた日藝同級生松島教授からのメッセージ


「SHOGUN」でエミー賞を受賞された真田広之さんのスピーチ


まずは真田広之さんのこれまでの軌跡と並大抵ではない努力の結実に拍手とともに賛辞を送ります。

日芸で同期だった私は、真田くんが学生時代から日本映画界のホープとして『忍者武芸帖百地三太夫』(1980)で映画初主演を果たした姿を知っています。彼はスタントマンも恐れる高さの崖から見事にダイブしていました。学生ロッカールームで何度か話した記憶がありますが、彼は卒業後も自らアクションスタントを厭わず、アクションスターとして数々の映画に出演し、テレビドラマでも話題性のある高視聴率ドラマで確かな成果を残しました。40代を迎える頃、演劇界の巨匠・蜷川幸雄さんの『リア王』をイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー公演で英語で演じきり、山田洋次さんの『たそがれ清兵衛』(2002)では新たな時代劇の魅力を伝えました。ハリウッド映画『ラスト サムライ』(2003)でトム・クルーズと共演し、そこからアメリカを拠点とした生活を始めます。第3回日藝賞を受賞した際に再会した時、今でも週に3回は州立大学で英語を学んでいると言っていました。その絶え間ない努力が英語力に結びついたのだと思います。数々のハリウッド作品に主要な役柄で出演し、アクションだけではない確かな存在感で世界的な人気を獲得していったのです。今回の『SHOGUN』への道のりも長く、平坦なものではなかったと思いますが、自らプロデューサーの一員となり、日本から時代劇の専門スタッフを9ヶ月に及ぶカナダロケに招き入れました。そのこだわりとリーダーシップが、誤魔化しのない本物で正当な日本語による時代劇を完成に導いたのです。歴史的快挙と言われる今回の受賞式でのスピーチは英語で作品に関わった全ての人への感謝とともに東と西が出会い、奇跡的に結実した作品への思いを語り、日本語で時代劇を愛してきた全ての諸先輩への敬意と謝意を述べました。真田広之さんの生きて来た道こそが歴史的快挙ではないでしょうか。日藝賞受賞の際に、子役からスタートした自分が江古田のキャンパスで演技を客観性と理論的に見つめ直した事がその後に繋がっている。二つに分かれる道があれば困難な方を選びたいと言っていたことを思い出します。夢を大きく持ち続ける力、責任を分かち合いながら楽しむ心、後進への惜しまないサポート。日藝を通過し、大輪を咲かせた真田さんの生き方を知って頂き、皆さんも夢に挑戦して欲しいと思います。あの頃の思い出とともに「ヒロくん、本当におめでとうございます」                       

映画学科教授 松島哲也

映画学科
松島哲也
OTHER TAGS