「読書筋を鍛える!~正しい姿勢で本を読む」ライブラリーカフェを開催!

長時間のパソコン作業や、「撮る」「描く」「彫る」「書く」「作る」といった制作活動をする人たちを悩ませる肩こりや首こり。図書館では、体育の授業科目を担当している小沢徹先生と畑瀨聡先生を講師に招き、「読書筋を鍛える!~正しい姿勢で本を読む」ライブラリーカフェを開催しました。

小沢先生の担当科目は「ウェイト・トレーニング」、「コンディショニング・トレーニング」、「演劇特殊研究」、「応用演劇特論」、「芸術と身体」など。体脂肪率10-12%をキープしている大変ストイックな先生です!

ステージで美しい姿勢が要求される俳優や歌手を目指す方から、長時間のパソコン作業でヘトヘトな方まで、姿勢や身体に関する悩みを持った学生と教職員が集まり、みんなで「正しい姿勢」とは何か?また「肩こりや首こり」の原因とそれを解消するエクササイズを楽しく学ぶ時間となりました。
以下、小沢先生のレクチャーの一部を掲載します。

「正しい姿勢」というと、どんな姿勢を思い浮かべるでしょうか。“胸を張っている”“背筋(せすじ)が伸びている”というのが一般的な回答だと思います。しかし「正しい姿勢」というのは、運動学的に考えるといくつかの視点があり、ただ“胸を張っている”“背筋が伸びている”姿勢が絶対的に「正しい姿勢」というわけではないのです。

「姿勢」の話を聞くとき、つまり「姿勢」を意識するだけでも、なんとなく背筋がピンと伸びます。意識するって、大事ですね!

運動学のテキストを開いてみると、正しい姿勢には5つの視点があると書かれています。その5つの視点とは、力学的視点(力学的に安定している)、生理学的視点(生理的に疲労しにくい)、心理学的視点(心理的に安定している)、作業能率的視点(作業能率からみて効率がよい)、そして美学的視点(美的にみて美しい)です。

そのため、胸を張っていなくても、背筋が伸びていなくても、椅子に浅く腰掛けて座面からお尻が出て背もたれの端っこに後頭部が乗った状態でも、作業がしやすい姿勢であるなら作業能率的視点で見ると「正しい姿勢」と言うことができるわけです。

しかし、この姿勢は不安定で疲れやすいです。そのため、日常生活を送るうえでは、身体の各部位のバランスが整って安定している力学的視点や、疲れにくい生理学的視点が重要ではないかと思います。

また、この両者は両立できると考えられます。そこで、力学的視点と生理学的視点に立って、「正しい姿勢」について考えてみましょう。

疲れにくい身体になって、制作に集中したいですよね。自分の姿勢を見つめ直し、「正しい姿勢」を探りました。

我々が立っているときの上半身の姿勢は、骨盤の角度に影響されます。身体を横からみたときに骨盤が前傾していると、いわゆる反り腰や出っ尻(でっちり)と言われるような、お尻が後ろに突き出たり、腰のカーブが強い姿勢になります。この姿勢は、一見背筋が伸び胸を張ったような姿勢になるためいい姿勢のように見えますが、腰や背中にある筋肉を強く緊張させているため、疲れやすく長い時間は維持ができません。

逆に骨盤が後傾していると、下腹部が前に出て、それとバランスをとるように背中が後方に丸まり、いわゆる猫背の姿勢になりやすくなります。さらに猫背の姿勢では胸のあたりから身体が丸まってしまい頭も下を向いてしまうので、前方を見ようとすると顎が前に出て首の後ろが常に緊張した状態になります。

これは座った姿勢でも同じような傾向になります。また座った姿勢は立っているときよりも楽に感じられますが、腰にかかるストレスは立った姿勢の1.4倍になり、さらに座位で上半身を丸めると腰へのストレスは立った姿勢の1.8倍にもなるという研究結果もあります。そのため、疲れにくい姿勢を維持したい場合は、骨盤の角度を調整し生理学的に「正しい姿勢」にする必要があります。

それでは、生理学的に「正しい姿勢」はどのように作ればいいかというと、立位では2つの動作を行います。まず、つま先立ちになり床から踵を浮かせます。このとき両腕も上に挙げて、身体が上から引っ張られているようなイメージで身体を伸ばします。しっかり伸びきったところから、両腕を挙げたままゆっくり踵を床につけ、両腕もゆっくり下ろし息を吐くと、反り腰にならない程度に骨盤がやや前傾になります。その骨盤の角度を保ったまま、胸の真ん中にある胸骨という骨を1~2cm前に出すように胸を張ります。これだけで、骨盤の角度が変わり上半身の姿勢も変わると思います。

普段猫背気味の人には、腹筋にやや力が入っている感覚があるかもしれませんが、慣れてくると背中や首の疲れは軽減すると思います。座位でも同じような姿勢を作りますが、最初から骨盤をやや前傾にして座り、上半身を上から引っ張られているようなイメージで伸ばしたら、立位と同じく胸骨を1~2cm前に出すようにします。これで、自然に生理学的視点からみた「正しい姿勢」を作ることができます。

このような姿勢は生理学的に正しく疲れにくいだけでなく、胸を張り背筋が伸びた姿勢になっているため、美学的視点からみた「正しい姿勢」にもなっています。

けがや内臓の不調がないのに、首や肩や腰に痛みを感じるのは普通の状態ではありません。またその痛みがあることに慣れてしまうと、痛みがあっても改善しようとしなくなってしまうおそれもあります。痛みは身体の異常を伝えるシグナルです。姿勢を整えるだけで、改善される痛みもあります。作品を作っている間は作業能率的視点からみた「正しい姿勢」でもいいですが、日常生活を過ごす上では、よい作品作りのために、まずは自分の身体をよい状態にしておきましょう。

小沢先生のレクチャーの後は、畑瀨先生に肩こり・首こり・腰痛を改善するエクササイズを教えていただきました。また、プチ不調相談会も行い、参加者からの身体や姿勢に関する様々な質問にお答えいただきました。

畑瀬先生の担当科目は、「健康スポーツ科学」「バトミントン」「ソフトバレーボール」「卓球」など。
日本陸上競技選手権大会で砲丸投12回優勝!という輝かしい経歴をお持ちの先生。
「筋肉Tシャツ」の着こなしも、さすがです。

エクササイズを数十分行っただけで、血行不良が改善されて身体が軽くなり、視界が明るくなった気がしました。気分も爽やかです。良い姿勢を保つためにパソコン画面の高さを調整したり、こまめに体を動かすなど自分の身体に注意を向けることで、ぐんと良い姿勢になり、身体が楽になることを実感しました。

この意識を持続して、制作や創作に集中できるよう頑張りたいですね!

今回の「読書筋を鍛える!~正しい姿勢で本を読む」ライブラリーカフェを機に、図書館では閲覧室に「バランスボール」を置くことを検討したいと思います。

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「アーティストの豊かな感情表現のカギは体力の向上にあり」

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芸術教養課程
小沢 徹
東京出身。日本大学大学院文学研究科教育学専攻博士後期課程修了(博士(教育学))。日本大学芸術学部芸術教養課程教授。専門領域は運動生理学。
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