演劇における批評の役割

演劇界の外から見ているだけでは、その内容と役割がよくわからない仕事があるかもしれません。その筆頭に挙げられるのが「演劇批評」の仕事でしょう。

「勝手に見て好きに書いている」…なんとなくぼんやりとそう思っている方もいるかと思いますが、これが大違い。演劇作品を丁寧に見て、分析して、その舞台を見ていない人にも、作品の背景や実際にどんな舞台だったのか、どのような魅力があったのか…などを丁寧に伝えるのが仕事です。大きな商業演劇の舞台でさえ、「たった」数万人のお客様しか見ることができないのが、生身の体が必要なライブ劇場空間で上演される演劇ですので、批評は、それを読む人のほとんどが「見ていない」という前提で書かれています。そしてその臨場感と空気は、映像化された舞台を通しても通じにくいため、その日、舞台と客席の間で起きていた目に見えないことを文脈づけて繊細に伝える仕事といってもいいかもしれません。そう、演劇批評は消えてしまう舞台を「きちんと見届ける」役割を担っています。舞台は作る人と見る人がいて初めて成立するものです。そう考えると、車の両輪として、演劇製作と演劇批評は存在するといってもいいでしょう。演劇学科では現役の演劇批評に携わる先生に来ていただき、演劇を丁寧に見ることについて学んでいますよ。

授業名 演劇批評研究

演劇学科
奥山緑
日本大学芸術学部演劇学科教授。長らく趣味=仕事=舞台芸術だけの人生だったが、コロナのおかげで韓国ドラマを大量に視聴。韓国ドラマ界が猛スピードで古いドラマツルギーを脱ぎ捨て自己革新し続けていることに注目している。最近の私:ペーパードライバー歴40年だったが先日卒業。
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