“All the world's a stage, -And all the men and women merely players.”
かつてシェイクスピアさんが書いた『お気に召すまま』という喜劇で語られるセリフです。「この世は舞台、人はみな役者」、人間の真理をつくような、見事な一文ですね。
たしかに、我々はいつだって仮面をかぶり、いくつもの舞台で振る舞いを変えながら生活しています。
では、その仮面はどんな形をしているでしょうか? どんな色? 重い? 軽い? あなたが立つ舞台の床はどうなっているでしょうか? 広々と柔らかな心地よい芝生の上? それとも一歩踏み外せば真っ逆さまに落ちてしまうような、細く険しい針山の上でしょうか?
生きるということは恥ずかしく、苦しいばかりと感じることがあると思います。私はそんな時、今いる場所を「ひとつの舞台」と頭の中で俯瞰して、舞台美術をデザインするように、少しだけ設えをととのえてみます。
“私の立つこのエリアに一段の台を作って、歩ける範囲を狭めてみよう。続く時間の先まで考えすぎず、今この瞬間にフォーカスできるようになるかも”とか、“ちょっと飽きてきたので場面転換。このタスクは一度手放して、次は動きのある場面へ”とか、“舞台に一枚の幕を下ろそう。しばし休憩!”といったように。
人生において苦しい場面に立ち向かう必要があるときにこそ、このデザイン思考が役に立ちます。あなたがもし、何か問題に直面しているのなら、今いる場所を「デザイナーの気分」で俯瞰してみてください。やったこともない舞台美術デザイナーの気分にはなれないって?そんなことはありません。気分が晴れないとき、好きな音楽をかけたり、美容室に行って髪を切ったり、部屋の模様替えをしてベッドサイドのランプを新しくしたりしますよね?まだ気づいていないだけで、実は誰もが自分の舞台をデザインしているのです。
私たちはみな役者ですが、役者が集まっただけでは世の中がおもしろくなりません。気づく目線をもてば、誰だって今日から衣裳デザイナーに、照明デザイナーに、舞台美術デザイナーになれるのです。
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