2022年、6月。武道館でモーニング娘。の森戸知沙希卒業スペシャルと題されたコンサートが行われ、BSテレビ朝日で生中継も行われました。テレビ地上波などでも紹介されたようですが大々的なニュースというほどにはなりませんでした。
しかし、モーニング娘。といえば、総売り上げ164万6630枚を記録した『LOVEマシーン』を筆頭に、かつてはテレビ番組で見ない日はないといわれたアイドル・グループです。2000年には、40本のCM出演もこなし、MUSIC STATIONへの出演も年間10回以上。テレビを中心とするマスメディアで大きな存在感をもっていました。
彼女たちがあまりメディアに登場しなくなってゆくのは、ちょうど日本におけるCDの売り上げが減少してゆく00年代でした。多くの方が「モーニング娘。」はもうおわったのかな、などと思っていたようです。しかしそうではありませんでした。『LOVEマシーン』が大ヒットした1999年、モーニング娘。は59回のコンサートを開催していました。その後、CD市場が不況へと向かうなかでもモーニング娘。は発売初週ランキング1位の記録は更新を続けています。それだけファンの応援があったということでしょう。のみならず2009年には78回、2013年には76回のコンサートを行っています。最近でもロックフェスなどに積極的に出るなど、ステージでのパフォーマンスはむしろ増えているのだといってもいいかもしれません。
テレビ番組で誕生し、テレビ番組に育てられたといってもいい、モーニング娘。は、消えていったわけではなく、ファンとの空間を重要視するタイプのアイドルへと「転換」していったというわけです。メディア・アイドルからライブ・アイドルへの変身を遂げたのですね。
こうしたモーニング娘。の動きを、まったく正反対に活用したのがAKB48です。ライブという空間を主軸にしていったアイドルの世界を活用し、逆にそのライブ空間からヒットチャートやテレビの世界へとみずからを押し上げていった。そんなAKB48の動きに多くのアイドルたちが呼応して、そこにSNSや配信、オンラインライブなどのあたらしい環境が加わりました。そのなかでモーニング娘。を中心とするハロー!プロジェクトも再評価され、今に至っています。そして鈴木愛理さんのようにテレビで活躍するアーティストも生まれてきました。
アイドルの歴史を眺めると、こうしたテレビを中心とするメディアの状況がとてもよく見えてきます。アイドルとファンとがどんな関係でいるのか、そこからどんなうねりが起きてくるのか。メディアの研究とは「人」の探究でもあるのです。
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