舞台作品に「恋」と「愛」は頻出します。ないものを探すことが難しいほどです。世界で最も有名な「恋」と「愛」の舞台作品は「ロミオとジュリエット」かもしれません。
「私のただひとつの恋が、ただ一つの憎しみから生まれたなんて」
これは恋に落ちたロミオが憎しみ合うモンタギュー家の一人息子であると知った時のジュリエットの台詞です。(「ロミオとジュリエット」松岡和子訳/筑摩書房刊より)
私は1年ほどカナダのケベック州で舞台芸術についての研修を受けたことがあります。その際に受け入れ先の劇団が新作として「ロミオとジュリエット」を創作していた時のエピソードを紹介します。
その劇団は若年層を対象とした公演を行っている団体で、新作の公演対象年齢は6歳から12歳でした。演出家に、なぜ『ロミオとジュリエット』を選んだのか聞いてみると
「人はなぜ争うと思う?お金、欲望、宗教、いろんな原因がある。昔ケベックは英語を話す人とフランス語を話す人の間で悲しい争いがあった。
ロミオとジュリエットはラブストーリー。だけど、6歳から12歳なんてまだ恋に落ちたこともないし、愛しいという気持ちなど知らない。でもその時期こそ、最も愛を欲する時期だとわたしは思う。その子どもたちに私は愛を届けたい」
にこやかに、そして力強く答えてくれました。舞台芸術は時代を超えて作品を、世代を超えて思いを、今という時代とともにダイレクトに届けることができる芸術です。
演劇基礎演習
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