遊びでアタマを柔らかくする-舞台美術専攻の初年度教育

「舞台美術実習Ⅰ −素材の振る舞いを発見する」の提出課題の一つ

遊びの原点はなんでしょうか?
現在4歳の息子を育てている筆者は、子育ての中で強烈な実感を得ました。それは、モノマネです。
ひとは生まれて1年も経たないうちに遊びとして「モノマネ」を始めて、その遊びは気づけば「ままごと」に進化します。
あるとき祖父母の前で営まれた「ままごと」には、当然演じる人がいて、物語があって、観客がいました。THE演劇。これが演劇の成立です。
人間は、本能的に演劇を営む生き物なのだということ、演劇の本質は遊びなのだな、ということを実感したできごとでした。

そんな演劇を学ぼうというのですから、舞台美術専攻の初年度教育でも遊びを取り入れています。
そのうちの一つが、紙と割り箸を使った素材の振る舞いを発見する、という内容です。
学生には紙と割り箸という2つの素材を渡して、それぞれの素材の特性や、加工に対する変化、つまりそのものがもっている「素材の振る舞い」を発見するべく向き合ってもらいます。
日本の革命的な遊び、折り紙もその一つですね。

自分が発見した振る舞いをみんなに紹介するつもりで、ミニチュアの空間に仕立てるというところまでが課題です。
与えられたおもちゃに対して、いかに自由に、気づかなかったことを発見できるか、というところが要点になります。

劇場空間は、われわれに不自由な条件を与えますが、その中でいかに自由を体現するか、ということは舞台美術家の担う重要な役割のひとつです。
柔軟に発想をするということができなければデザイナーは務まりません。
長年の義務教育で凝り固まったアタマを柔らかくほぐして発想に自由を与え直すべく、今日も学生は真剣に遊びます。

本能的に演劇を営む
演劇学科
青木 拓也
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