このパンデミックの中でライブについて考えることが多くなりました。まずは授業です。日本大学芸術学部でも、一時は実習も含め、すべてオンラインでの実施となり、私もこれまでの講義ノートをオンライン用に切り替え、なんとか対面授業と同等の情報を伝えられるように準備しました。

正直言って、数ヵ月のことだろう、そのうち対面にもどるはずだと思って授業を開始しました。最初はバタバタしましたが、オンライン授業を始めてみると、これが意外に心地いい。その主な理由はノイズがないからです。ここで言うノイズとは、遅刻者の教室への出入りや、講義中の居眠りや私語などです。そういうことに気を取られることなく、講義をスムーズに進められるのです。受講生のほうもWi-Fi環境さえクリアできれば、どこでも受講できるし、オンデマンドの配信の授業にいたっては、いつでも受けることができる。

 ただ、授業を進めていくうちに絶対的な何かが足りないと考えるようになりました。それは五感で受け取る場の空気です。オンラインではその空気の共有ができません。私はこの空気を察知して、授業内容を「受け入れてもらった」か「受け入れられなかった」のかを、瞬時に感じながら授業を進行してきたのだと改めて感じました。そしてその空気にはノイズの共有も含まれるのです。おそらく、オンラインの授業で課題が多くなったのは、反応がないことに対する教員側のストレスの表れなのかもしれません。

 たしかに、オンライン授業は情報の伝達には長けています。しかし、私たちが入手する情報はそれだけではない。場からの情報も多々あって、それがライブの1回性を成立させているのではないでしょうか。

【演劇概論Ⅱ】

演劇学科
藤崎周平
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