喜劇の恋、悲劇の愛

2021年音楽学科オペラ公演 モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」より フィオルディリージ・グリエルモ&ドラベッラ&フェッランド

舞台の上ならどんな恋愛でもできる

オペラの作品は恋愛物ばかりと言っても決して過言ではない。
なぜならどんな悲劇においても愛の二重唱は含まれているのである。それは後の悲劇をより一層悲しくさせるための手段でもあったりする。
私が新国立歌劇場で演じた遠藤周作さんの「沈黙」でも、オペラになるとテノール「モキチ」の恋人役として、原作には出てこない「オハル」役が悲劇のヒロインとして登場する。
オペラはイタリアで生まれて、425年ほどの歴史の中で世界中に広がった。
たくさんの作曲家がオペラを作り、現在に至っているが、現在上演されているオペラ作品の中に愛の二重唱が含まれないオペラがあるだろうか?もしあったら、教えていただきたいほどである。
もちろん長い歴史の中で、独立戦争をがテーマであったり、宗教戦争がテーマであったり、さまざまなテーマがあるのだが、なぜかそこに恋人たちが登場する。
戦争によって恋人と引き裂かれてしまう話とか、敵国の若者に惹かれ、実らぬ恋として自殺してしまう話とか、それはそれはいろいろな恋愛があるのである。
私がオペラ歌手としてデビューした「椿姫」は恋人の父親によって別れさせられ、恋人の腕の中で息絶える役である。
世界中で上演回数が多いオペラのほとんどが悲劇のヒロインが主役となる。
しかし、オペラには悲劇だけではなく喜劇も存在する。喜劇は誰も死ぬことがなく、とにかくハッピーエンドだから観ていてもちろん楽しいのだか、何より演じている本人が一番楽しい。
日藝のオペラはほとんど喜劇を上演している。なぜなら授業の発表の場である公演が楽しいことが一番であるし、それ以外に喜劇には主役・準主役がたくさん登場することが多い。
主役・準主役を勉強して、オペラの中でいっぱい恋愛して、楽しい公演ができて、カーテンコールでスポットライトを浴びてたくさん拍手をいただく…これってすてきだと思いませんか⁉
それが日藝のオペラです。

日藝音楽学科公式YouTube

【ダイジェスト】第51回オペラ公演 W.A.モーツァルト《フィガロの結婚》

https://www.youtube.com/watch?v=aCbb-mvFi4w

音楽学科
斉田正子
日本大学芸術学部音楽学科教授。ミラノに留学。藤原歌劇団「椿姫」のヴィオレッタにてオペラデビュー。専門はベルカントオペラで国内外の国際音楽コンクールに上位入賞。日本オペラ振興会正団員。日本演奏連盟会員。経団連国際教育交流財団評議員。
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