独学でやるボーカロイドの作曲の難しさ

気軽にいろいろな人が挑戦するボーカロイドの作曲のその難しさ。何が難しく、どうすれば良いのか。

中・高生にも人気があり、若年層で作曲する人も多いボーカロイドですが、そういった側面とは逆に、長年の学習に基づいた熟達の技術が必要でもあります。
ボカロPはやるべきことが多くありますが、曲自体をしっかりと作る能力がまず必要です。
構造をどうするか、コード進行をどうするか、どのようにメロディーを当てはめるのか、裏メロ的なものをどう書くのか、ベースの音をどう整えるのか、などなど作曲をする技術力自体も多様な知識と考察が必要になります。
また、作品としてきちんと仕上げるにはDTMの「打ち込み技術」も必要ですし、適切なミックスも自力でやることになることもほとんどです。
また動画の形にすることが多いので、動画編集も必要になるケースも少なくありません。
上記のことだけでも大変ですが、言葉を扱う以上は言葉に関する知識も必要ですし、歌詞で使う可能性がある日本語と英語のリズム的、ピッチ的特徴を把握するだけでも一苦労です。
言葉を自然に表現するために、言葉のフォルマントとピッチの関係を意識したり、日本語特有の表現、例えば小さい「っ」で表現されるような音をどう適切に表現するか、などなど考えることはたくさんあります。
できる限り「伝わる」歌詞を音楽に当てはめるには正確に言葉を扱う必要があり、こういったことは本当に小さい、細やかな事ですが、
細やかな配慮を曲の随所で実施することで全体のレベルが上がり、プロらしい作品になり、活躍できる可能性とその活躍が長続きする可能性が上がります。
曲を作る能力に関しては、実際にはほぼ学習をせずに感覚だけで、言い換えれば才能だけで大きく評価される曲を書けるような人たちもいます。
ただ、そういった才能がある人は限られていますし、もしくは本当の意味での才能というのがある人はこの世にはいないのかも知れず、才能ある人の結果も何らかの努力や学習の結果でしかないのかも知れません。
そんなわけで、ほとんどの人たちは「勉強」をする必要があります。
勉強が面倒で、自力で試行錯誤してボカロ曲を書くということもあると思いますが、いろいろと問題が出てきます。
勉強をしないで作曲をする際に起こりうる問題は以下のようなものです:
「毎回似たような曲になる」「どこかで聞いたことがあるような曲になる」「変な響きになるが直し方がわからない」「転調がうまくできない」「曲がいつまでたっても完成しない」などなど。
この中でも「どこかで聞いたことがある曲になる」というのは非常に危険で、盗作行為を無意識にすることになるかも知れません。
やることが多いボカロPになるには効率的に道を進んでいく必要があります。
作曲を学校で本や先生から学ぶという行為は、先人の人々が何百年にもわたって、どういう音を人が嫌がるのか、人はどういう音を好むか、というものを規則化したデータベースを知るということなので、非常に効率的です。
自分で良い音や人が嫌う音を探す、もしくはみつける時間がショートカットされるので当然です。
多様な勉強が必要なボカロPの活動ですが、逆にこれらをきちんとやればほとんどの商業音楽の分野、映画音楽やゲーム音楽、ポップスなどの世界で作曲家として活躍できる力が得られますし、そのことは多くの実例が示しています。
勉強はそりゃしたいけど、どう勉強すればいいかわからない、ということもありと思います。
結論から言うと、大学や専門学校で作曲を専門で学べるところを探すのが一番です。
ネットの時代なので、ネットで勉強できると思う人も多いのですが、これは個人的には危険な考えだと思っています。
まずはアフィリエイトや再生数稼ぎの影響が原因で、例えばソフト音源でどれがおすすめかを書いている記事があるとしても、高い商品が売れるほど収入が増えるので、とりあえず高い商品を無駄に勧めてあるケースが少なくありません。
また、まったく知識がなくてもそれっぽく記事を書いて広告収入をねらうという人たちも増えているので、一見してそれっぽいことを書いてあっても、中身がないようなページや動画も少なくありません。
こういったトラブルはすでにきちんと勉強をしていれば回避できますが、何も知らない状態だとネットの情報が正しいか正しくないかもわかりません。
例えばアメリカでゲーム音楽の作曲をしているほとんどの人たちは大学等で専門的に作曲を学んだ人たちだといわれています。
結局大学等で作曲を専攻するのが重要というのがこういったデータからもわかります。
生みの苦しみというものが作曲含めさまざまな芸術にはありますが、それを軽減するのもまた学習や教育です。
楽しく作曲できるように、たくさん勉強しましょう!

音楽学科
小林純生
作曲家、詩人、言語学者
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