メディアによる障害者表現

Channel 4

皆さんは『感動ポルノ』という言葉をご存じだろうか。

この言葉はコメディアンでジャーナリストの ステラ・ヤングが名付けた。

健常者が障害者を見て自分たちの下には障害者が存在し、自分たちは恵まれているということを客観視し感動させやる気を起こすために障害者を利用するのは、特定の人を物扱いして他の人が得をする「ポルノ」と同意義なのではないかと主張している( Stella Young, 2014)。

このように障害者はメディアによってその存在が物として扱われていると言っても過言ではないのかもしれない。

メディアは本人の意思にかかわらず、個人の目前まで運ばれてきたイメージとしての他者に対し異なる見方が繰り返されてしまい、異なる文化に属する人が当事者意識をもたないことで文化的他者化する危険性が指摘されている((坂田, 2007)出典:小川, 2018)。

また障害者と日常生活のなかで交流する機会はほとんどないため、私たちは障害者の大変さや努力をよく知らず、知るとなったとき私たちは教科書や本・ネットなどのメディアを通して知ることが大半であるため、われわれが抱く意識はその媒体の表現方法に影響されがちである(小川, 2018)。

描かれ方に関しては見直しを迫られている。以下は障害者のメディアでの描かれ方を記している。

<メディアにおける障害者の表現方法>

1 チャリティー番組などで見られる弱者や犠牲者

2 パラリンピックなどの天才的・ヒーロー

3 障害者が引き起こした事件や事故に基づく暴力的な脅威・困難

4 障害による依存性

5 ケアされる運命でお荷物になる

6 幸せな生涯は送れないというステレオタイプ

((Nelson,2003:175-180)出典:小川, 2018)

障害者に対するネガティブなステレオタイプを正していかなければならない。

スウェーデンの公共放送では子ども番組の司会者や登場人物に障害者を積極的に起用することで、子どものころから障害者などの社会的少数派に馴染むように取り組んでいる((Alatalo&Alatalo, 2014)出典:小川, 2018)。

イギリスではテレビ局が障害者の扱い方について議論を続けていて、公共放送のBBCではガイドラインが設けられている。

また公共放送の「チャンネル4」ではリオデジャネイロパラリンピックにおいて障害者のリポーターを積極的に登用し、当事者の観点から報道した(毎日新聞, 2016)。

現代社会においてわれわれは障害者を含む社会的少数派についてだけでなくさまざまな情報をメディアを通して得ているが、その情報が本当に彼らのような存在の本質を表現しているとは限らないため、簡単に受け入れるのではなくわれわれが社会で生きていくなかで障害者も社会の一員だという自覚をもたなくてはいけない。

<参考文献>

Stella Young, 2014, TED「I'm not your inspiration, thank you very much」

小川明子、 2018、「インクルーシブ・メディア」ノート01 チャリティか、感動ポルノか? 身体障害 とメディア表現について考える

毎日新聞、2016、「<障害者の取り上げ方>「感動」に流されず、多面的に伝えて」

<画像引用>

OFFICIAL WEBSITE OF THE PARALYMPIC MOVEMENT

美術学科
金 秋雨
OTHER TAGS