「動画SNSとフィルターバブル、そして人生のノイズ」

メディア・リテラシーⅡの授業風景

なぜ、動画SNSに夢中になってしまうのか?
「1ユーザー」から脱して、じっくり構造を眺めることで、これからの「人生」に、「芸術」に大切なヒントがみえてくる?

こんにちは
皆さん、TikTokやInstagramをみていたら、

「あ、やばい、1時間経ってしまった…」
なんてことはありませんか?

はい!
クリエイターを目指す皆さん。

動画SNSを漂流する「1ユーザー」で終わることなく、
難しい顔で歩きながら「なぜユーザーたちは漂流するのか?...」と考えながら、そのまま電柱にぶつかるくらいが芸術です。

さて、今回は、あくまでまじめに勉強している、
授業「メディア・リテラシーⅡ」の内容を少し覗いてみましょう。

「SNSというお金儲け -ビジネスモデルから見えること-」

Twitterの創業者ジャック・ドーシーは2022年に「twitterは会社ではなく、公共財でありたい。」という発言をしました。
※2022/4/26の本人のツイート

この言説に関しては、一理あるかもしれません。
近年、マスメディアではなく、SNSを出発点とした情報が、世論を作り、社会の争点となり、そして政治の議題となるケースも増えてきました。
皆さんの中にも、SNSは「公平で正義を実行するコミュニケーションツール」だと思っている人もいるかもしれません。

答えはYES & NOです。
ここで絶対に見落としてはいけないことは、SNS企業は今は「営利企業」だということです。
例えばインスタグラムを運営するメタ・プラットフォームズ社(旧フェイスブック社)は世界で9番めの企業です。
※2022年7月12日時点の時価総額(Yahoo!ファイナンス)

ということは、ビジネス(お金儲け)のロジックが必ずあるということです。

はい、
「わかってるよ広告でしょ?」と思った方、
YESです。
では、もう一歩話を進めましょう。

では、その広告収益を伸ばすためにどのような企業努力があるのでしょうか?
その答えは?

・ユーザートラッキング
・レコメンドアルゴリズム
・AI
などなど

え・・・??あ、う、う・・・

そうなんです、この先はもう、テクノロジーの話なのです。しかも最先端のテクノロジーです。
(この辺りの話も授業ではしっかり説明します。)

「人生のノイズはどこへ消えた? -SNSのフィルターバブル-」

では、本記事では、われわれユーザーサイドに目を向けていきましょう。
ネットスラングに「情弱」という言葉があります。
あまり好ましくない言葉ですが、あえて使います。

授業で、「自分が情弱だと思う人手を挙げて」と尋ねると半分以上の学生が手を挙げてくれます。

「え、なんで、みんなZ世代とかいうかっこいい世代じゃないの?」と、最初は思いました。

この現象を解く鍵として、イーライ・パリサーという人が定義した「フィルターバブル」という概念がとても参考になります。

この図をみてください。

授業スライド(一部) TEDトーク「イーライ・パリザー:危険なインターネット上の「フィルターに囲まれた世界」」


実は皆さんは、インターネットを縦横無尽に飛び回りながら、いろんな情報をゲットしている間に、インターネットに、同じ量もしくはそれ以上の行動履歴を落としています。
企業は、それを前述のユーザートラッキング、レコメンドアルゴリズムなどのテクノロジーで分析し、皆さんに、興味のあるもの(興味をもちそうなもの)を提案するわけです。
つまり、インターネットを飛び回れば飛び回るほど、良い意味でも悪い意味でも「ノイズ」がどんどん減っていくという構造です。
この状況を客観的に外からみたものが「フィルターバブル」なのです。

つまり、
AさんもBさんも全く違うバブルに入っているわけです。
もはや、何が削除されて、何が採用されているのかわからない状態です。
他の人と違うものが見えてることに気づかない状態です。

企業側からすれば、
AさんとBさんをそれぞれのバブルに入れてしまえば、
その中で、ずーっとコンテンツ(そして広告)を見てくれる。
という構造です。

あー、だから、なんだか自分が「情弱」と感じるのか….
なんだ、この虚しさは・・・芸術がしたい。

と思った人は「ノイズ」を大切にしましょう。
普段触れないこと、予想外のできごと、そんな、適量な「ノイズ」が人生を豊かにします。

フィルターを壊して、ノイジーな生活と共に、芸術をしましょう。

芸術教養課程
加藤 亮介
日本大学芸術学部 芸術教養課程 准教授 博士(芸術学) グローバルメディア・国内メディア企業にて、コンテンツ・ビジネス業務に従事、 その後、研究者となる。日藝では、芸術論から産学連携まで幅広く担当。
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