


ー当時を振り返り,日本大学芸術学部へ入学された動機など,教えてください。
高校2年生の時に美術に興味を持ち、様々な美術大学のオープンキャンパスに足を運びました。その中で、母校美術部の顧問の先生が日藝のご出身だったこともあり、日本大学芸術学部のオープンキャンパスに参加したのが最初のきっかけです。
当日、実際に教授が抽象画を描いている様子を拝見し、それまで抽象画をほとんど見たことがなかった私は強い衝撃を受けました。「ここで学んでみたい」と思いました。
また、日藝は多彩な学科が集まり、専門領域を越えて交流できる環境があることを知り、自分の視野を広げられる場所だと感じました。そうした点に魅力を感じ、入学を志しました。

ー学生時代はどのようなことを専門に学ばれていましたか。また,学生時代はどのようなことに打ち込まれていましたか。
大学では美術学科絵画コースに所属し、油絵を専門に学んでいました。制作を通して、表現力や描画力を養うことができたと思います。絵画を通してものを見る力や色を扱う力を培えたことは、今の仕事にもつながっています。
また学生時代は、在学中からゲーム業界でデザイナーとして働くことを目標にしていたため、大学外でも3DCGを学ぶためにダブルスクールをしていました。美術と3DCG、両方の分野を学ぶことで、自分の強みを広げることができたと感じています。

ー学生時代に印象に残っている授業科目や課外活動などはございましたか。
印象に残っているのは、アトリエで制作していた時間です。絵画の授業はもちろんですが、友人と他愛のない話をしながらお互いに作品を描いていた時間は、今となってはかけがえのない思い出です。制作に向き合う中で0から1を生み出すことの難しさに直面し、悩みながらも取り組んだ経験は今でも自分の糧になっています。
また、特に記憶に残っているのは美術作品研究という授業です。私が受講した当時は講義の中で90分間同じことを繰り返し、その体験をレポートにまとめるという課題が一度だけありました。友人の中には校舎で靴紐を90分間結び続けたり、壁に張り付いて過ごしたりした人もいました。私はちょうどコロナ禍だったので、自宅の浴室で蛇口から落ちる水を90分間見続けるという体験をしました。今思えば不思議な時間でしたが、「美術を学んでいるな」と強く実感した瞬間でもありました。

ー日藝に入る前のイメージと,入学後,卒業後のイメージにギャップはありましたか。
日芸に入る前から「やりたいことをのびのびと学べる場所」というイメージを持っていましたが、その印象は入学してからも卒業してからも変わりませんでした。サークル活動も多様にあり、座学と実技の両方に取り組める環境はとても濃密な時間だったと思います。
課外活動についても、人によって非常に活発で、展示やコンペへの参加、ボランティア活動など、それぞれが自分の関心に沿って積極的に取り組んでいました。大学のある江古田の街自体も芸術に携わる人が多く、地域と関わりながら活動できる環境が整っていたことも印象的です。
入学してから新しくやりたいことが見つかった人も、それを本気でやり遂げる人が多く、そうした姿勢にも刺激を受けました。自由度が高い環境でありながら、それぞれが自分のやりたいことを貫くという雰囲気があったのも、日藝らしさだと感じています。
ー学生時代に抱いていた「こうなりたい,こんなことをしたい」という「夢」について教えてください。
学生時代に明確にこうなりたいと思ったのは、ゲーム業界で3DCGのデザイナーになることでした。きっかけはコロナ禍で一人で過ごす時間が増え、ゲーム開発の動画などを目にするようになったことです。それまでは漠然と一般職に就こうと考えていましたが、ゲームの3DCG制作を見て「自分もこうしたクリエイティブな仕事に携わりたい」と強く思うようになりました。
そこからはがむしゃらに行動していました。大学ではアトリエで油絵を描き、移動中の電車では座学のレポートを書き、自宅や専門学校ではひたすら3DCGの勉強をしていました。日々の生活をデザイナーになるという夢に向けて費やしていたのは、今振り返っても大きな転機だったと思います。
ー現在のお仕事に就かれた理由や動機などを教えてください。
現在の仕事に就いた理由は、背景のデザインに興味があったこともあり、好きなゲームのマップ制作に関わりたいと強く思いました。学生時代から3DCGを学び、ゲーム業界への就職を目指して準備を進めました。
今の会社を選んだのは、幼少期から弊社のゲーム、特にダンジョン系の作品が好きだったためです。
自分が制作したものがゲームに実装され、最終的にユーザーの皆さんに楽しんでもらえるという流れに携われることは、大きなやりがいとなっています。
ー現在のお仕事の内容ややりがい,こんな形で社会とつながっている,といった紹介をお願いします。
現在は、ゲーム会社で3DCGデザイナーとして制作に携わっています。自分がデザインしたものをモデリングし、ゲーム内に実装していく過程で、作品が形になっていくのを見るのはとてもやりがいがあります。
また、ゲームを通じて多くのユーザーの方に楽しんでもらえることも大きな喜びです。最近関わった『伊達鍵は眠らない From AI:ソムニウムファイル』は、シリーズ3作品目のスピンオフで、熱心なファンの方が多い作品です。こうした作品に少しでも関われたことは、クリエイターとして非常に嬉しい経験でした。
自分の制作したものがユーザーの体験や楽しみにつながることで、仕事を通じて社会とつながっている実感を持つことができるのも、この仕事の魅力だと感じています。

ー現在のお仕事で「日藝」時代の学びや経験から得られた能力などがあれば教えてください。
日藝で学んだ描画力や表現力、タスク管理の経験は、現在の仕事において直接的に役立っています。
さらに、他学科公開科目で学んだ内容も知識として活かされています。映画学科の映画芸術学では作品の見せ方や構成を、写真学科のカメラメカニズムでは光やレンズの仕組みを学びました。それらは背景デザインを考える上での基礎知識として今も役立っています。
ー現在のお仕事を進める中で日藝を出て,良かったと感じるエピソードなど,ございましたら紹介ください。
まだ社会人1年目で、仕事面で大きな成果を語れるほどではありませんが、日藝で多様な人や表現に触れてきた経験があるからこそ、色んな人がいる環境でも自分らしく動けるという気持ちを持てています。
そして、のびのびとやりたいことに打ち込めた経験があるからこそ、今も自信を持って仕事を楽しむことができていると思います。
ーこれから受験を考えている高校生に,日藝をお勧めする(としたら)一言をお願いします。
日藝は学科に関わらず、色々な作品や人に出会えるとても自由で刺激的な場所です。
自分のやりたいことに打ち込める環境が整っているので、ぜひ大学生活を楽しみながら、自分の好きなことを追求してみてください。のびのびと挑戦できる経験は、必ず将来の自信や力につながります。
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