多くの著名なクリエイターを輩出している日本大学芸術学部(以下:日藝)と共同で、未来のクリエイターのためのビジネス視点を養うための産学連携講座「芸術総合講座Ⅳ コンテンツビジネス実務」を実施いたしました。この記事では、共同で実施した背景や実施内容について、本講義の責任者である日藝 加藤准教授と、Ameba事業本部責任者下山氏に話を聞きました。
加藤准教授
特別講座「芸術総合講座Ⅳ コンテンツ・ビジネス実務」は、未来のクリエイターたちにビジネスやキャリアへの最初の気づきを与えるため、サイバーエージェントと連携して実施する産学連携講座です。
「つくる」「表現する」といったアウトプットに強みを持つ日藝生は、専門技術を日々磨き、それを活かした創造的な活動に取り組んでいます。一方で、メディアやエンターテインメントの分野では、グローバル資本の流入や流行の変動により、市場の変化が加速しています。そのため、日藝生が創造性を鍛えながら、市場の変化に柔軟に対応できる力を身につけられるよう、産学連携を通じて社会の最新情報を迅速に学生に還元すべきだと考えました。
そこでこの講義では、将来のキャリア構築に必要なビジネス視点を身につける“最初の一歩”となることを目指しています。加えて、自身のスキルや創作活動が社会や経済にどのような影響を及ぼすのかを理解し、行動できる力を育むことを目的としています。
前職の同僚である下山さんに協力をお願いし、昨年度からサイバーエージェントと共同で取り組みを開始しました。今年度からは、講座内容をより実践的にし、講義の日程を5日間に拡張し、1年生からの履修も可能にしました。
下山氏
5日間共通のテーマは『視野を広げる』こと。日藝出身の成功クリエイターが多い中、自身の現在地とのギャップを感じキャリアに悩む学生も多いと聞きます。今回は1年生からを対象にしたため、"仕事のイメージ"を湧かせ、キャリア形成に役立ててほしいと考えました。
そこで本講座では、映像・マンガ・スポーツなど多様なコンテンツを取り上げ、講義やワークショップを通じて仕事やコンテンツビジネスの理解を深めるカリキュラムを設計しました。各日程テーマを明確に提示し、毎日オリエンテーションと回収作業を行うことで、学びをしっかりと持ち帰ってもらえるよう工夫しました。
日藝での学びをどのように仕事に繋げるかを理解するために、「仕事」を理解する講義を実施。仕事とは顧客視点で考えること、また制作以外の多様な職種について解説しました。後半では「価値観マンダラート」ワークを実施。参加者は自身の好みや長所、仕事における重要な価値観を書き出し、それらの共通点や背景を深く掘り下げました。講義後半には日藝出身社員2名が登壇し、それぞれのキャリア変遷を紹介しました。
▼学生の声
・好きなことと仕事の関係性について考えるきっかけを与えられた。漠然と好きなことと仕事はvs関係にあると思っていたが、違いは顧客起点でスタートするのが仕事だという事も初めて知った(美術学科、1年)
・自身のやりたい考えやアイデアを押し殺して媚び続けることではなく、客層や自身の作品の価値、つまり誰が自身の作品を求めているかを重要視して取り組む必要があるということを学ぶことができた(文芸学科、1年)
2日目はコンテンツビジネスの中の「ものづくり」にフォーカス。縦読み漫画のコンテンツスタジオ「STUDIO ZOON」編集長の村松氏が登壇し、「クリエイターと世間を繋ぐ企画術」をテーマに講義を行いました。クリエイターの発想を世の中に届ける形式にすることが「企画」であること、また、その考え方について解説しました。講義後半では日藝出身で現在(株)QualiArtsでシナリオライターとして働く多田氏が登壇し、シナリオライターの仕事内容とこれまでのキャリアについて紹介しました。
▼学生の声
・「作家らしいテーマを」という話の中で、その人本人にとっては当たり前でつまらないものだと思っていることも、その人を知らない人からすれば新鮮で面白く映るという視点が興味深かった。(音楽学科、1年)
・クリエイターと世間を繋ぐには結論的に企画が大事であり、それが売りの根底にある。クリエイターが自分の中にあるものを引き出す為にも、頭の中のものを言語化するという力は非常に大事であると感じた。(美術学科、2年)
3日目は新しい未来のテレビ「ABEMA」のマーケティングを担当する若林氏と、サイバーエージェントが開発・マーケティングを担当する「ジャンプTOON」のプロデューサー竹内氏が登壇し、「コンテンツを届ける」をテーマにマーケティングについての講義を行いました。いいものをつくるというのは当たり前になった世の中で、いかにユーザーに知ってもらい広めていくのかというマーケティングの基礎を、事例を交えながら解説。後半には「ジャンプTOON」プロモーション担当の中西氏も加わり、「ABEMA」のマーケティング施策を考えるワークを実施しました。
▼学生の声
・これまで世間から求められるものづくりが大切だと学んではいても、実際どうやって、またどういう視点をもてば顧客のニーズを満たすものが作ることができるのかと疑問を抱く事が多かった。今回の授業で実例を出しながらマーケットイン、プロダクトアウトなどから生まれるものやwho・what・howなどを知り、ものづくりに役立つ知識を得ることができた(音楽学科、1年)
4日目は「ABEMA」編成統括の塚本氏と、広報PR責任者の山﨑氏が登壇。前日までに“つくって届けて儲ける”というコンテンツビジネスの基礎を理解した上で、それらを実現するための“いいプロジェクト作りと成功に導く方法”にフォーカスし、スポーツコンテンツを事例に講義を行いました。また、後半では「プロジェクトで使えるコミュニケーションワーク」というテーマでワークを実施。人間の思考や行動パターンを9つに分類する性格診断「エニアグラム」で、自分の得意・不得意なコミュニケーション方法を知ることや、プロジェクトを進める際のルールを決めるワークを実施しました。
▼学生の声
・一番印象に残ったキーワードは「共通認識」。簡単な言葉で集団の共通認識があると、ゴールに対して全員が同じ熱量で取り組むことができるのだなと腑に落ちた(演劇学科、1年)
・エニアグラムという考え方がとても面白かった。自分と他人をある程度カテゴライズして分かりやすく言語化することでコミュニケーションを円滑にし、トラブルを減らすことができるということに気がつき、とても革新的な取り組みだと驚いた(音楽学科、3年)
最終日は2つの講義を実施。第一部では日藝出身のBABEL LABEL代表取締役社長 山田氏が登壇し、自身のキャリアを追体験しながら、好きなことを仕事にするために必要なマインドについて講義を行いました。第二部ではサイバーエージェント執行役員の藤井氏と、興行事業本部で局長/プロデューサーを務める若林氏が登壇。藤井氏からは「エンターテインメントビジネスの未来」をテーマに業界の変遷からトレンドについて紹介。若林氏は自身がプロデューサーを務めた「Creator Dream Fes 2024 ~produced by Com.~」を例に、興行事業のプロジェクトの流れと各セクションの役割、プロデューサーの仕事内容について紹介しました。
最後のワークでは、初日に行った「価値観マンダラート」を改めて実施。この5日間の講義を受けて仕事において大切にしたい価値観を改めて考え、変化があった点を考察しました。
▼学生の声
・今の学生は失敗を極端に嫌うケースが多い気がする。そんな我々にとって「諦める前に、出来る方法を考えよ」という山田さんの言葉はこれ以上ない励ましの言葉のように聞こえた(文芸学科、3年)
・肩書きだけで仕事を選ばず、自分がしたいこと、ブレない軸を持つということが特に印象に残った(デザイン学科、1年)
下山氏
この講座は夏休みの特別講座という形式で実施したのですが、130人以上が参加してくれました。これだけの学生が夏休みの貴重な時間をこの講義に費やしてくれたので、相当な覚悟を持って参加してくれたのではないかと思います。
講義中はSlido(※)を用いたのですが、コメントが多く活発的でしたし、毎日提出してもらったレポートの学びの質も高く、各講義の学びをしっかりと持ち帰ってもらえたのはよかったです。
加藤准教授
日藝生のキラキラした好奇心や創作には、いつも感心させられます。しかし、社会への不安を抱えている学生も少なくありません。特に芸術分野では、自分に向き合う機会が多いため、クリエイションと社会とのつながりに課題を感じることもあるのでしょう。
今回の講義では、サイバーエージェントの業務や会社の基盤を支える人の多様性について話してもらい、多様な個性を活かすチームビルディングの方法も学びました。これらは「自分らしく活躍すること」に対して、一つの道筋を示すものだったと思います。
学生たちは「好きなことに向き合い、それを紡ぎ直していこう」という考え方を持つことができたのではないでしょうか。実際に、「勇気づけられた」「ポジティブになれた」という前向きな反応が多く寄せられました。
下山氏
参加した学生には、この講義が人生やキャリア感の新たな気付きのきっかけになっていることを期待しています。
今後もこのような取り組みを行っていきたいと思っていますのでぜひ参加していただきたいですね。ここでの学びを卒業後も思い出し、今度は自身が還元する側になってもらいたいです。
加藤准教授
学部や学科での学びを大切にしながら、「自分の芸術」をさらに深めていってほしいです。自分と向き合い、学び続け、アウトプットを続けることが成長の鍵です。
今回の講座に参加し、“自分の源泉”を見つめた皆さんは、きっと新しい視点やスキル、そして自身の可能性に気づいたことでしょう。社会に出ても、この姿勢を貫いてほしいと思います。
Cyber Agent Way
https://www.cyberagent.co.jp/way/list/detail/id=30823
サイバーエージェント Creative PR(X)
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