ー 当時を振り返り、日本大学芸術学部へ入学された動機など、教えてください。
高校生の時に美術の先生からプロダクトデザイナーという職業があると聞き興味を持ったのがきっかけです。「生活を豊かにする」のがプロダクトデザインで、その中には「問題を解決するためのデザイン」があるということを知り、漠然と「好きだから絵を描く仕事をしたい」と考えていた当時の私にとっては「自分以外のために絵を描くこと」は目から鱗で、その話が「絵を描く理由」に繋がったと感じたことを覚えています。
ー 学生時代はどのようなことを専門に学ばれていましたか。また、学生時代はどのようなことに打ち込まれていましたか。
入学当初デザイン学科にあったインダストリアルコースで、工業デザインについて学びました。授業ではクラスメイトと教授の前で行うプレゼンがあり、そのために大きなパネルや模型を用意しました。慣れないプレゼンテーションの段取りや、今まで使ったことのない工具、道具、機械、ソフトウェアで作ったことのない模型作りなど、毎日知らないことに囲まれてがむしゃらだったことを覚えています。
ー 学生時代に印象に残っている授業科目や課外活動などはございましたか。
インダストリアルデザインコースの1~4年生までを集めて行われたデザイン合宿が強く記憶に残っています。
学年を越えた学生全員が同じテーマでデザインを仕上げる数日間の合宿で、あぁでもないこうでもないと話しながらみんなで1日中悩みました。
ー 日藝に入る前のイメージと、入学後、卒業後のイメージにギャップはありましたか。
大学に入る前は受動的に勉強をしていたことの方が多かったので、学びたいことに関する様々な刺激に驚きました。モノづくりに適した環境、尊敬できる先輩・後輩、負けたくないと思わせてくれる同級生の存在はとても大きかったです。
ー 学生時代に抱いていた「こうなりたい、こんなことをしたい」という「夢」について教えてください。
先にあげた「問題解決のためのデザイン」は私にとって大きな転機になった言葉であるとともに、当時の目標でした。デザインを考える起点として、困っていることや「こうなればいいのに」というところから考えるのが得意なのかなという意識があったので、それを活かせたらと考えていました。
ー 現在のお仕事に就かれた理由や動機などを教えてください。
課題のたびに「誰のためにデザインしたいのか」を考えた時、いつも思い浮かぶのが「子ども」だったので、就職活動でもベビー用品メーカーやおもちゃメーカーなどを受けました。就職活動中に同級生に誘ってもらった任天堂の会社説明会で、当時の社長である岩田さんの「モノづくりに対する姿勢や考え方」の話が強く印象に残って、この会社で働きたいと思ったことがきっかけです。
ー 現在のお仕事の内容ややりがい、こんな形で社会とつながっている、といった紹介をお願いします。
研修を経て現在は3Dキャラクターデザイナーとして働いています。ゲームのキャラクターのデザイン・モデリング・アニメーション等がメインの業務で、マリオカート8やゼルダの伝説ブレスオブザワイルドの開発に携わりました。私がそうだったように、自分たちが作る世界観や体験が誰かの思い出や経験になったら嬉しいなと思いながら制作しています。
ー 現在のお仕事で「日藝」時代の学びや経験から得られた能力などがあれば教えてください。
日藝での課題とプレゼンを経て「どうしたら良いデザインになる?」「どうしたら注目してもらえる?」「どうしたらわかりやすく伝わる?」と、人との関係の中でしか生まれない試行錯誤ができたことが、1番大きな学びだったと考えています。組織の中では常に人と関わって仕事をすることになるので、自然とそういう考え方ができるようになったことが、今も自分自身の助けになっています。
ー 現在のお仕事を進める中で日藝を出て、良かったと感じるエピソードなど、ございましたら紹介ください。
ゲーム内で作る機械や車などのデザインにおいては「そのものらしさ」を残しながら視覚的な情報を足し引きすることが多いです。プロダクトデザインに熱い人たちに囲まれた4年間で培った「プロダクトの萌えるポイント」を探す力は私を支えてくれていると思います。
ー これから受験を考えている高校生に,日藝をお勧めする(としたら)一言をお願いします。
これからどんな道に進むとしても、知らないことを知ること、やったことないことをやってみること、立ったことのない立場や境遇を体験したり話を聞いてみることが重要だと強く思います。しかし、私にとって「アンテナを張って新しいことにチャレンジすること」は莫大なエネルギーを使いますし、どうしても腰が重たくなってしまうような「重い課題」でもあります。環境、仲間、課題への取り組みを含めた日藝での4年間は、そういう性質の私の背中も押してくれました。 好きなことや得意なことを見つけるのは難しいですし、変化していくものだと思いますが、日藝はその手助けをしてくれる大学だと思います。
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