CAREER Model インタビュー企画 川口市立戸塚西中学校(川口市教育委員会)所属 美術学科卒業 森下聖大さんに聞いた「日藝」とは??

ー 当時を振り返り、日本大学芸術学部へ入学された動機など、教えてください。

専門的な知識や技術を学べるだけでなく、様々な分野の科目を受講することができたり、他学科の教授と話せる機会が多くあることに魅力を感じていました。また、入学先の美術学科彫刻コースでは、8学科横断型で参加できる日藝アートプロジェクト(NAP)の中心として今も活動を続けています。そのメンバーの一人として参加ができることも魅力の一つでした。

ー 学生時代はどのようなことを専門に学ばれていましたか。また、学生時代はどのようなことに打ち込まれていましたか。

美術学科彫刻コースでは、様々な素材に触れて自分に合った制作スタイルを探せる機会が多くあります。1・2年生では基礎的な制作方法や造形理論を学び、3・4年生では、学生一人一人がテーマをもつ形で自由に作品を作れます。自分の作品を中心に様々な先生から意見をいただくことができるので、アイデアや可能性、作品の完成度の高め方について幅広く学ぶことができました。また、外部から講師を呼んだり、教授の作品についてもレクチャーがあって、美術に対する考えを深く学べました。

ー 学生時代に印象に残っている授業科目や課外活動などはございましたか。

新潟県十日町市で行われている「大地の芸術祭  越後妻有アートトリエンナーレ」に鞍掛先生+日本大学芸術学部彫刻コース有志のメンバーとして参加することができたことです。そこでは、廃屋や廃校となった場を新たなアートの空間に変えてきました。作品制作やアート作品をきっかけに、人と人との結びつきを目的とした活動でもあります。日藝のアトリエでは味わえない、自然に囲まれた中での作品制作、美術だけでなく新潟の文化や歴史、現地の人とのつながりなど大切なことを多く学びました。

学部3年生で体験した稲刈りの風景。コンバインを運転しています。新潟県十日町市にて。

ー 日藝に入る前のイメージと、入学後、卒業後のイメージにギャップはありましたか。

日藝に構えるアトリエや研究室には、ありとあらゆる機材や工具、重要な書物や資料が保管されています。図書館も充実した品揃えで、在学中は当たり前のように手を伸ばしながら利用していました。しかし、卒業して環境が一変した時に、その「当たり前」が、実はすごい環境に身を置いていたのだなと気づかされます。それだけに、日藝は自分が求めれば何でもそろっている環境だと感じています。また、同期生や同じ環境で制作してきた仲間がいたことも、私が「当たり前」と感じていた点の一つです。卒業してからは、意見交換の場や互いを刺激し合う仲間に会える機会が激減しました。そのため、作品制作に対する客観的な意見をもらえる仲間の大切さに気づかされます。

ー 学生時代に抱いていた「こうなりたい、こんなことをしたい」という「夢」について教えてください。

どんな状況でも作品を作り続けられる人でいたいという思いが強かったです。大きな作品を制作して発表できる機会や環境を求めていました。仕事をしながらでも創作の手を止めずに作品を発表する姿勢を取り続けていくことが大事だと考えていましたし、今でもその思いは持ち続けています。「そろそろ個展を開きたいな、開かないとな。」って(笑)

ー 現在のお仕事に就かれた理由や動機などを教えてください。

一番大きな動機としては、美術を通してたくさんの人とつながれる仕事に就きたいという思いが強かったからです。美術という教科の特徴は、生徒に刺激を与えるだけでなく生徒側から刺激をもらえる点です。教員が予想もしない作品を生徒が作るたびにハッとさせられ「面白い!」と感じます。まさしく、美術を通してたくさんの人とつながれる魅力的な仕事だと感じています。

2021年に行われたゼロ・ケルビン展に出品した作品の前で解説している時の写真。
風の流れや風によって柔らかい布がなびいている様子をテーマに制作しました。

ー 現在のお仕事の内容ややりがい、こんな形で社会とつながっている、といった紹介をお願いします。

美術の教員としてのやりがいは、『美術ってこんなに楽しいんだよ!つらく感じなくていいんだよ!』ということを様々なアプローチで生徒に伝えられる楽しさにあります。今、求められている美術の授業は、テクニックの伝授ではなく、「制作方法=何でもあり!」という中で繰り広げる柔軟的思考力の育成に移行してきていると感じます。美術の授業に向き合う中で、自分に合った制作方法を主体的に見つけて「こんな作品や制作方法もありなんだ!」と発見をしていく授業を作ることにやりがいを感じます。

ー 現在のお仕事で「日藝」時代の学びや経験から得られた能力などがあれば教えてください。

日藝で培った《美術》に関する知識や技術はもちろん、作品に対する幅広い可能性をもって制作に挑む考え方を今も大切に意識しながら仕事に活かしています。作品でつまずいたり手が止まってしまうことは誰しもありますが、一人一人ポイントが違います。そのため、ケースバイケースで様々な解決策を提示できるように授業を行っています。私の中で大切にしている「作品に対する幅広い可能性」は、日藝生時代に教授陣からいただいたアドバイスや多角的な考え方があってこそです。

タイトル『なびくかたち』 
作品サイズ:縦90㎝×横90㎝ 素材:木材(ヒノキ)・パネル風によって薄い生地がなびくような様子を厚み2㎝のヒノキの板から彫りだして、パネルに取り付けた作品。「風を彫りだす」というテーマで取り掛かったこの作品は、目で風を感じてもらいたいという狙いをもって制作しました。

ー 現在のお仕事を進める中で日藝を出て、良かったと感じるエピソードなど、ございましたら紹介ください。

私の専門分野は彫刻ですが、中学校で行っている美術の授業では、絵画や版画、デザイン、作品鑑賞といった専門外のことも取り扱います。そこで、「日藝で良かった!」と思える点は、他学科・他コースの授業を受講することができることです。専門外の科目を受講することで、様々な知識を深く掘り下げることができました。頭の中に知識やアイデアの引き出しを多く作って授業に生かすことができています。

中学2年生を対象とした授業風景。オリジナルの看板をスチレンボードで制作しています。"

ー これから受験を考えている高校生に、日藝をお勧めする(としたら)一言をお願いします。

日藝への進学を考えている受験生へ。こんにちは!私は日藝を卒業してから、美術の教員として中学校に勤務しています。私は学生の頃から教員を目指して教職課程を受講してきました。私がこうして教壇に立てていられるのは、専門分野を深く身に着けられる環境と教授陣のおかげです。それだけでなく、「粘り強く生きる力」を日藝は教えてくれました。日藝は何でもそろっている素敵な環境です。自分が求めれば誰にでもなれるし何でもやれる場所です!ぜひ、日藝に通って自分の可能性を広げてみませんか?

埼玉県坂戸市に構える共同スタジオで作品制作を進めています。彫刻家が共同で使用している制作現場で、周りは畑に囲まれています。
時間や音に気を遣わずに作品に向き合えています。

https://www.instagram.com/seidai011/

2016年(学部卒) / 2018年(院修了) 美術学科彫刻コース卒業 芸術学研究科造形芸術専攻彫刻分野修了
森下 聖大
川口市立戸塚西中学校(川口市教育委員会) 所属 / 総合型選抜利用
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