プラットフォームの強みを生かし多様性を多様な表現で ABEMA「17.3 about a sex」

近年急にスポットが当たった感じのする多様性という言葉。
しかし、そもそも私とあなたは違っていて、同じ人間は一人としていないはず。
であれば、生き方も一人ひとり違って当たり前。
多様性は、実は普遍的で誰もが関係するテーマなんです。
その多様性を取り上げた番組の中から紹介したいのが、ABEMAで2020年から配信されているドラマ『17.3 about a sex』です。

高校生の目線から描く“性教育”

女子高生3人が性にまつわる問題に向き合っていくこのドラマ。
性交渉や妊娠に関することだけでなく、同性愛に対する偏見、さらにアロマンティック・アセクシャルや女性の生理に対する向き合い方も地上波のドラマに先んじて取り上げており、性=SEXにまつわる問題を幅広く扱っています。
そもそも、性への向き合い方は生き方にかかわってくるものであり、生き方の多様性を考えていくうえで欠かせない要素のはず。
しかし、日本の性教育は遅れており、若い人が本当に知りたいことが教えてもらえないのが実情。触れることすらタブーになってしまっています。
そのためか、ドラマでも取り上げられる機会はあまり多くありません。
取り上げられたとしても大事なテーマであるがゆえに大上段に構えたものや、大人の目線から描いたものも多く、ともすると説教臭くなりがちだったり。
しかし、この作品では高校生の目線から性に向き合っており、若者が本当に知りたかった“生きた性教育”が描かれているのです。
また、ティーンが見たいと思える、見て楽しめる作りが意識されているため、ドラマを楽しんでいるなかで自然と知識がつくようになっています。

ABEMAの強みを生かした番組作り

もう一つ注目すべき点が、この番組がABEMAオリジナルの配信ドラマということ。
性にまつわる問題は誰もが関係することですが、きわめてプライベートな問題でもあります。
そうなると、スマートフォンなど個人のデバイスで見ることのできる配信は非常に相性が良いのです。
さらに、ABEMAはライブストリーミングと1週間の見逃し配信が広告収入で運営されているため、アプリさえあれば誰でも無料で見ることができます。
また、若者向けの番組が多く、若者世代の利用率が高いのも特徴です。この作品を1番見てほしい若者世代に届けるには最適なプラットフォームと言えるでしょう。

メディアと多様性

ここ数年で動画配信サービスが一般的になったことにより、テレビ放送では扱いにくいテーマも描けるようになり表現の幅も広がりました。
世の中にはたくさんのメディアありますが、それぞれ得意な分野が違います。
それぞれの強みを生かした作品が増えていくことで、今後作品の多様化も進んでいくでしょう。
それは、より多くの価値観を受け入れられる社会の土壌を作り出すことに繋がっていくのではないでしょうか。

放送学科
石毛 みさこ
日本大学芸術学部放送学科助教。1990年生まれ。朝ドラと配信を研究中。日々の生活の中で、ふと隣にあるエンタメが好き。趣味は埼玉西武ライオンズ。
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