あらゆる光で空間を制する

◇明るく照らす

 あなたが今これを読んでいる場所はどんな空間ですか?そこにはどんな明かりがあるでしょうか。自宅のリビングの蛍光灯の下、ゆったりくつろげる少し暗めのカフェの一席、LEDライトに照らされた地下鉄の車内、オレンジ色の街灯が続く路上、きれいに染め上げられた東京タワーの下…などなど考えられる場所はたくさんありますが、その場所ごとに何かしらの照明器具があることでしょう。特に日没後は照明器具なしには生活できない現代ですし、照明が空間の雰囲気を決定づける大きな要素となっています。
 19世紀末に白熱電球が実用化されて以来、技術革新の発展とともに舞台芸術も大きく発展しました。この発展に最も影響を与えたのが“照明“です。暗い室内を明るく照らすことができるようになっただけでなく、照らし方を工夫することで空間を自在に創造できるようになりました。何もない劇場内が照明の力で昼になったり夜になったり、森の中や海の底、時には宇宙にだってできるのです。こうして舞台空間の照明効果をデザインする人のことを特に”舞台照明家“”ライティングデザイナー“と呼びます。

◇誰でもライティングデザイナー
 自分の部屋を想像してみましょう。例えば日中、窓から差し込んでくる太陽の光。日が落ちてきて西日に照らされる時間。「この窓の影カッコイイなぁ」とか「この夕日の当たり方が美しいなぁ」とか思ったことがあるのではないでしょうか。さらに暗くなって室内の電気をつけるとき。「勉強するからとにかく明るくしたい」「ここにランプがあったらくつろげそう」「バーみたいな空間にしたい」なんて考えたことはありませんか?こうやって日常のあらゆる光を想像することこそ、ライティングデザイナーの仕事です。つまり誰だってすでにライティングデザイナーなのです。
 あなたの光に対する感覚を、どうやって舞台作品に落とし込むか。まずは想像してみることが演劇への第一歩です。

関連専攻:舞台美術コース照明専攻

関連授業:舞台照明演習・舞台照明実習Ⅰ~Ⅲ・総合実習・照明研究

演劇学科
南 香織
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