演劇は、多くの場合、室内の劇場で上演されます。昼でも扉を閉めてわざわざ暗くして、そこに電気で照明を当てて明るくします。また舞台美術でいえば、日本にはほとんどロングランのシステムがないので千秋楽後にはトラック何台分もの廃棄物が出たりもします。また、業界としては、芝居の観客は演劇を見慣れているシアターゴーアーのお客さんであることが多いので、業界の習慣として、手っ取り早くその人たちに情報を提供するために劇場では他劇場のチラシがドサッと提供されます。ですのでSDGsの観点では、演劇は何かと目標に逆行しているようにも見えるのですが…。しかし、よく見てみると、そうでもないのです。

照明はLEDに代わり、大道具はリサイクルしています。チラシもリサイクルしますし、演劇学科の企画制作専攻の授業では、「紙のチラシを印刷する必要があるのか?」ということを学生が討論しています。業界の常識を疑う――これは新鮮な目と熱いハートをもつ日藝演劇学科生が得意とする討論です。

また、日本は、多くのSDGsの目標で徐々に改善してきましたが、いまだに大きく余地を残しているのが「5 ジェンダー平等の実現」です。私は芸術教養課程のオムニバス授業「芸術総合講座I」のコーディネーターも務めていますが、私が尊敬するアーティストやプロデューサーの方々に講師をお願いしたいと探していたら、敏腕テレビドラマプロデューサー、演劇プロデューサー、音楽プロデューサー、注目の映画監督、出版プロデューサーなどなど、全員女性の講師陣になりました! 創造産業では、すてきな女性たちが現場でキラキラ仕事をしています。輝く人生の先輩たちに直接お話をうかがえる、そんな場所が用意されているのが日藝です。

芸術総合講座I

目標

5 ジェンダー平等を実現しよう

12 つくる責任 使う責任

演劇学科
奥山緑
日本大学芸術学部演劇学科教授。長らく趣味=仕事=舞台芸術だけの人生だったが、コロナのおかげで韓国ドラマを大量に視聴。韓国ドラマ界が猛スピードで古いドラマツルギーを脱ぎ捨て自己革新し続けていることに注目している。最近の私:ペーパードライバー歴40年だったが先日卒業。
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