先生になりたい

私が通っていた高校の美術の先生は、授業時間は生徒と一緒に物を作り、それ以外の時間には自分の版画制作をしているような昔ながらの美術の先生!という方でした。
卒業してからお会いした時にその話をしたら、生徒には見えていない学校運営の仕事がとても大変だったことをうかがいましたが、当時の私にはものづくりのおもしろさ、ものづくりをするうえでのヒントを教えてくれるとても貴重な大人でした。
受験勉強で単語を暗記したり、一つの答えを導き出す方程式を解いたり、作者の気持ちになって文章を抜き出したりする科目も点数として結果がはっきり出るのでわかりやすくておもしろかったのですが、答えが無限にあり、自分だけの大切なものを探して手を動かすことや、
出てきたものと対話しながら完成に近づけていくその行為は当時の私にとってはとても特別なものでした。
もちろん、そんな簡単にゴールは見えてこないわけですが、自身が制作している先生だったので、制作している人だからこそのアドバイスで導いてくださり、先生の言葉は抽象的でもありながらなんだか腑に落ちる感覚がありました。
結局私はその世界にのめり込み今こうして美術の世界の片隅にいるわけですが、美術の世界に進んでいない同級生たちも美術の先生に教わったことが今も心に残っていて、生活しているなかでよく思い出すと言っています。
現在図工や美術の時間はどんどん削減され隅に追いやられていっていますが、実際に制作しそのなかで閃いたり腑に落ちたり、いろいろな経験をした私たちだからこそ言える言葉があります。
美術学科で実際に作品を制作するという経験をし、そのなかで教職の勉強をすることは、教育の勉強と同時にものづくりの真のおもしろさを知っている先生になれるということです。
美術の先生というのは、特別な存在です。そしてとても責任のある大切な職業だと思います。
物を作ることから見える視点で世の中を見返すことによって、よりすばらしい世界に展開していけるのではないでしょうか。
美術学科で教職をとり先生になる皆さんはそういったことを未来ある子どもたちに伝えていける大切な存在です。

美術学科
坪井 麻衣子
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