日本大学校友会会報誌「桜縁」掲載特集 卒業生インタビュー Radiotalk株式会社 代表取締役/CEO 井上 佳央里 氏 ~ヒットメーカー~

ラジオトークのロゴを配したTシャツはもはやユニフォーム。「基本、毎日これを着ています!」

〝話すこと〟をエンタメに!
場が熱狂する音声配信サービス

2018年のリリース以降、80万ダウンロードを突破した
音声配信アプリ「Radiotalk(ラジオトーク)」。
高校時代からのラジオ好きが高じて「話すこと」のエンタメ化に着手。
ラジオトーク株式会社CEOの井上佳央里さんが描く未来とは。

ライブでも収録でも
手軽に自分だけの番組

近年、小学生の〝なりたい職業ランキング〟で常連のYouTuberなど「配信で稼ぐ」というトレンドは今、動画から音声の分野にも及ぼうとしている。
その最先端を行くのが「ラジオトーク」だ。
 ラジオトークは誰でも簡単に音声コンテンツの収録・配信ができる音声配信アプリ。〝トーカー〟と呼ばれる配信者は、1タップで手軽にトークを開始できる。配信方法は、リスナーとリアルタイムでコミュニケーションをとる「ライブ」と、アプリ内でトークの編集や加工ができる「収録」から選ぶことができ、Spotify、Apple Podcasts、Google Podcasts、Amazon Musicで、ポッドキャストの自動配信も可能だ。
 一方でリスナーは、チャットやスタンプでリアクションしたり、投げ銭のように、ギフト(スタンプ)を購入してトーカーを応援したりすることもできる。配信が盛り上がると、スマホの画面はリスナーのコメントやスタンプであふれ、配信者は盛り上がりに応じて収益を受け取ることができる。人々を楽しませることができる人ほど、経済的にも報われる仕組みだ。2022年には月500万円以上稼ぐ人気トーカーが登場し、音声配信で生計を立てる人も生まれている。

リスナーとの距離の近さラジオの魅力を応用

高校時代からラジオが大好きで、聞くのはもちろんネタ投稿にも熱心だったという井上さん。媒体にこだわらないコンテンツ作りに携わろうと、エキサイト株式会社に入社した後も、ラジオは常に生活の中にあった。
 「ラジオは日常に光を照らすような面白いコンテンツなのに、なぜ市場に注目されないのか、疑問に思っていました」
そんな中、井上さんはいち早く市場の波をキャッチした。
 「2017年頃、Amazon EchoやGoogle Nestなどスマートスピーカーが発売され、世界の市場で〝音声〟のフォーマットが注目され始めました。また、アメリカではポッドキャストリスナーが増加する流れもあり、これからは新しい〝しゃべり〟のプラットフォームが来ると思ったのです」
 こうして2017年、社内ベンチャー制度を利用して「ラジオトーク」の開発に乗り出した。
 「ラジオをいいなと思う理由を分析すると、電波を使っているから、芸能人が出るからといったことではなく『リスナーのネタが読まれる距離の近さ』や『ながら聞きができる利便性』が魅力なんだと改めて気付き、それをラジオトークに応用しました」
 β版をリリース後、2019年にはカーブアウト(*1)で独立、代表取締役に就任した。
(注釈)
*1 企業が事業の一部を切り出して、新企業を独立させること。外部投資を受けられるようになるため、経営資金が確保しやすくなる。

目指すのは社会現象。
ラジオトーカーを職業として成り立たせたい

アイデアを生むコツは「生活の中で〝これいいな〟と思えるものに気付ける状態にしておくこと。そして、その〝いいな〟が、なぜいいのかを分析すること」

「いろいろなことの積み重ねでストーリーはつながっていくもの。学生時代は『まずやってみること』が大切です」

世の中に求められているか成果を数字で示す


作りたいものや描く未来像をブレずに持ちつつ、「それが世の中に求められているか」を常に意識しているという井上さん。
 「世の中にフィットしたものが作れているかを確認するための指標が〝事業の結果〟だと考えていますので、成果を数字で示すことも重要と捉えています」
現在、同社は累計7億円の資金調達を実行し、上場を目指して飛躍的な成長を続けている。上場による認知度のアップにも期待するが、経営的な目標は「時価総額100億円以上の企業にすること」だ。
 4年前「経営の知識ゼロ」で独立した時は、経営論、経営者に関する書籍を読みあさって考え方や生き方を学び、投資家へのプレゼン方法はYouTubeで配信されている先人の経験を参考に習得した。CEOとして、業績と社員の幸福度のバランスを取る難しさに苦悩した時期もある。80万ダウンロードは「何度も失敗を繰り返し、本当にドロドロになりながら」得たヒットなのだ。
 2022年にはビジネス経済誌『週刊東洋経済』の「すごいベンチャー100」に選出され、個人としては、ギャラクシー賞(*2)ラジオ部門の選考委員も務める。駆け登った山の大きさに比例して評価や注目度は上がったが「錯覚しないことを心掛けている」と、現状を冷静に受け止める。地に足を着け、目指すのはただ1点。井上さんの最終目標は「〝ラジオトーカー〟という職業を当たり前にする社会現象をつくること」だ。
 「日芸の仲間や頼りになる先生方が今でも精神的な支え。活躍する先輩方のように、私も志高く進んでいこうと思います」
(注釈)
*2 放送番組に関して国内で最も権威があるとされる賞


“話す・聞く・リアクションする”
距離の近さが「ラジオトーク」の魅力


キーワードは「誰でも・今すぐ・簡単に」。飲み会のように、また、仲間と楽しむボウリングのように、みんなでワイワイ楽しめるのがラジオトーク

ギフトを贈る

リスナーは、チャットや無料のスタンプ、有料のギフトでリアクションし、場を盛り上げる

生放送

ライブ配信は最長30分。リスナーとリアルにコミュニケーションできる

収録

収録時間は12分。編集も加工もスマホで簡単。BGMや、ツッコミなどの効果音も入れられる。

ゲストを招待

ゲストを招待し、一緒に話すこともできる。コロナ禍の外出自粛期間にいち早くリリースした機能

ラジオトーク配信中の、画面の盛り上がり。画面いっぱいにリスナーのリアクションが広がっている。スコアは、リアクションの量を数値化したもの



Radiotalk株式会社


東京都港区南麻布3-20-1 Daiwa麻布テラス5階
2019年設立。ポッドキャストへの配信が可能な音声配信サービス「Radiotalk」を開発・運営。ギフティングでの収益化により急成長を遂げている。累計7億円の資金調達を実行し、上場を目指す。

※日本大学校友会会報誌「桜縁」デジタル版のバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
2012年芸術学部放送学科卒業
Kaori INOUE
入学時は文芸学科。商業的な側面も含めたラジオ制作について学びたい思いが強くなり、2年生の時に放送学科へ転科。本学卒業後、エキサイト株式会社入社。2017年社内ベンチャー制度でRadiotalk(β版)をリリース。2019年独立しRadiotalk株式会社代表取締役に就任。2022年ギャラクシー賞ラジオ部門選考委員。
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