朝日新聞出版のメンターたち(取材などをサポートする記者)とディスカッションを行う日藝チーム。
朝日新聞出版メディアビジネス部が主催する「大学対抗!ネットニュース総選挙」に参加した日藝チーム(芸術学部文芸学科・小神野真弘ゼミⅢのメンバー)。過去の記事では2022年7月1日に開催された開会式の様子を報告した。「大学生記者の甲子園」とも呼べるこのコンテストに挑戦するにあたり、日藝チームはどのような活動を行ったのか。その内幕を紹介する本連載の第1回、日藝チームが直面した最初の壁は「“日藝らしさ”とは何なのか」という問いだった。(文/植松謙太郎@「大学対抗!ネットニュース総選挙」日藝チーム)
「バズるニュース記事を書くためには、『happening』(現在進行形の出来事)、『feeling』(不満や怒り、興味などの感情)、『timing』(記事を出す時期)という3つの条件が重要であるといいます。今の日大にはすべてそろっている。不祥事を避けて通るのではなく、むしろ真正面から受け止めていきたい」
開会式の閉幕後、チームメンバーと朝日新聞出版側のメンター(取材・執筆などを指導するアドバイザー)である平井啓子記者の顔合わせが行われた場で、日藝チームのリーダー・滝本爽は今後の意気込みをそう語った。
ネットニュース総選挙は7月の開会後、7月中にネタ集めや事前取材を行い、8月にかけて取材テーマの決定、9月から10月にかけて取材・執筆、そして11月に記事を公開する。アクセス数や読了率などが集計され、年が明けた2023年3月にその結果に基づいた表彰が行われる予定だ。日藝以外に、慶應義塾大学、デジタルハリウッド大学、流通経済大学が参加している。メンター・平井記者との初めての打ち合わせで核心となったのは、どんな記事を目指すべきか、という議題。意見を交わすなかで、平井記者から「日藝らしい、ユニークな記事にしていきたいですね」という指摘があった。それを受けて、一人の学生からこんな質問が上がった。
「一般の人から見た日藝って、どんなイメージですか?」
何気ない質問だが、重要な問いだった。改めて考えてみると、私たちは日藝の中にいて、外から見た「日藝・日大」の姿を詳しくは知らなかったのだ。
平井記者は「日大の本部とは少し離れていて、特別なイメージがありますね。不祥事続きでしたけど、良い意味で蚊帳の外と言いますか」とコメント。これをきっかけに、まずは社会が日大・日藝にどのようなイメージを抱いているか正確に知るべきだと、チームの意向が合致した。
平井記者らが、日藝の外で生きる人々(多くは社会人。OB・OGも含む)にヒアリングした結果、こんな意見が寄せられた。匿名の意見ではあるが、だからこそ忌憚のないものであり、私たちにとっては貴重な声だった。
「日藝は『日大であって日大でない』と日芸の学生が思っている。つまり別の大学と学生も思っているし、世間もそう思っている。日大の一連の事件があった時も、恐らく他人事だったのではないか」
「爆笑問題、宮藤官九郎、三谷幸喜、篠山紀信、ホンマタカシ、大石芳野、吉本ばなな、林真理子、群ようこ、本仮屋ユイカ……と思い付く卒業生を並べるだけでも日藝の日本の大学における、あるいは日大内におけるユニークさがわかる。学生は日藝のそうした伝統から、自意識過剰な面があるとも言われている」
「日藝は特殊なブランド力がある。日大は不祥事のイメージだが、日藝は個性のイメージ」
「真面目な人はいませんでした(笑)。でも『不真面目』なのではなく、一見ばかばかしいと思われることにも「こだわりを持って、突き詰める」人が多かったように思います。そういう人達と一緒に過ごし、刺激を受けることが本当に楽しい(他の大学にはないだろう)贅沢な4年間でした」(OB)
「卒業後に『あの人も?』『あの人も?』と、日藝OBがさまざまな業界に潜んでいることを知るんです。林真理子さんも日大の理事になられましたが、文芸学科の偉大な先輩です」(同)
こうした声を受けて、私たちは自分が日藝にどんなイメージを抱いているのか、意見交換とディスカッションを重ねた。チームから出た意見は次のようなものだ。
・日大と日藝には大きな隔たりがあると思う。その中でも日藝は他学部と交流することもあまりない。
・日藝生であることに皆なプライドを持っている。クリエイティブ思考の学生が多い。
・ズレてる人が多い。けれど制作を例に取れば、1つ1つをストイックにやっていく印象がある。
・学業をやりたいという人は少なく感じる。そして日本っぽい。自分の持っている日本人のイメージと合う。
・不祥事も外から見ている印象。他学科とも交流できて、学科もごちゃ混ぜで制作もよくやっている。
・調子に乗っているようなイメージ。自分達すごいよねという感じの、自意識が強いように思う。1つのことを突き詰めている人が沢山いる。
・鬼に金棒。意欲と積極性がすごい。
・先生方のサポートが手厚い。コロナの対応や、授業中の質問対応とかも親身に答えてくれる。
多少の差異こそ見られるものの、大筋のような部分は似通っているように思える。芯が通っていて、自分のやりたいことには一直線な印象も見受けられるし、そのおかげで周りが見えなくなっているような印象も見られる。
これを受けて、小神野真弘専任講師からは日藝のイメージについて「はみ出し者の自負はあって、その上で、芯が通った価値になるものを作りたいという人が多い。変わったブランドであることを自覚しながらも、独自の視点で発信している」というコメントがあった。
日藝らしさを考えた時、私たちは自分が何者であり、周囲の日藝生はどんな印象なのか、そして、自分たちは外部の人々からどう見られているかを真剣に考えた。結局のところ、これについて明確な答えは出なかった。しかし、何かを伝える立場になった時に自分達が何者であるかを知っているのと知らないのでは大きな違いがあると感じている。
今回の話し合いを受けて、平井記者からは「日大・日藝のイメージ、ブランド力を共有、確認しつつ、その上で、ネットニュース総選挙のテーマ『私たちのReStart』で自分たちが伝えたいことはなにか。そして企画の中で、日大らしさをどう出すか。他大学に書けない独自の視点か、この記事を通して日大の魅力を伝えられそうか。この2点を意識して、日藝チームにしか書けないテーマで企画を考えていきましょう」とアドバイスを受けた。
企画会議に進むための最初の一歩となった「日藝らしさを考える」という話し合い。取材活動そのものとは離れているものの、非常に面白い空間が出来上がっていたと私たちは感じた。自分たちがどんな強みを持っているか、逆にどんな弱点を持っているか、これを確認することはあらゆる局面で役立つと思われる。さらには今後の取材活動にも活かせる「軸」のようなものが出来上がったように感じた。
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##署名
植松謙太郎@「大学対抗!ネットニュース総選挙」日藝チーム
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