ー当時を振り返り、日本大学芸術学部へ入学された動機など、教えてください。
高校は美術の専門コースに通っていて、もともと好きだったお芝居と美術を組み合わせたものが学べないかと調べていたところ舞台美術を学べる数少ない大学ということで日藝を知りました。実習の多さと在学中から意欲的に自主活動をしている学生が多いのが魅力的で入学しました。
ー学生時代はどのようなことを専門に学ばれていましたか。また、学生時代はどのようなことに打ち込まれていましたか。
演劇学科で舞台美術を専攻していました。デザインだけではなく大工道具を使って制作するところまで学びました。授業の中では舞台実習の思い出が強いです。プロの現場で活躍している卒業生が講師になって教えてくださったのは今振り返るととても貴重な経験でした。実習のない時期は同級生たちと学生劇団を組んで、新宿や下北沢の地下で演劇公演をしていました。こちらでは自分達の想像で思いっきりチャレンジできるのですが、大半は何かしら失敗して、その後実習でしっかりとしたスキルを学ぶという感じでした。私はやってみないと納得出来ない頑固なところがあるので、この2つのバランスが自分には合っていたように思います。
ー学生時代に印象に残っている授業科目や課外活動などはございましたか。
授業ではないですが、装置コースの制作環境は本当に凄いです。仕事で色々な会社の工場に行きますが、日藝よりも良い環境のところを見たことがありません。使用していない時に貸し出してほしいくらいです。仕事の現場では環境のせいで諦めざるを得ないことも多いですが、それを最小限に抑える環境が用意されているのが素晴らしいと思います。
ー日藝に入る前のイメージと、入学後、卒業後のイメージにギャップはありましたか。
入学前は漠然と日藝生は破天荒というイメージがありました。言い方が難しいのですが、実際は破天荒を演じている真面目な人たちという感じがしました。ふざける時も大真面目に考えて入念に準備、面白いものを作るための準備は想像以上に地味でした。卒業後は制作現場で定期的に日藝卒業生と会います。真面目に働きつつも何か面白いこと出来ないかと企んでいる人が多いイメージです。困難が現れると皆さん少しニヤッとします。
ー学生時代に抱いていた「こうなりたい、こんなことをしたい」という「夢」について教えてください。
正直将来のことはあまり考えていなくて、いかに今が楽しいかで動いていました。とにかく仲間とともに演劇を作るのが楽しくて、大学の実習か仲間内の自主公演か常にどちらかをやっている状態でした。
ー現在のお仕事に就かれた理由や動機などを教えてください。
テレビドラマが好きだったので、よく観ていた民放に入りたかったのですが、教授の強い勧めで気が付いたらNHKを受けることになっていました。私が進んだ業界には既に卒業生がたくさんいて、教授自身も業界について詳しい方でしたので、私に合った場所を勧めてくれたのかなと思っています。
ー現在のお仕事の内容ややりがい、こんな形で社会とつながっている、といった紹介をお願いします。
NHKで制作しているドラマやニュース番組などの映像デザインを担当しています。スタジオセットや番組ロゴ、CGなどのデザインが主な業務です。最近はアロマンティック・アセクシュアルを自認する主人公のドラマ「恋せぬふたり」を担当しました。社会の中であまり知られていないことを知るきっかけになればという思いで番組を作っています。いずれは特定の人にスポットライトを当てなくても多様な人が自然に登場する番組が作りたいですが、今はまだ多様性を知る段階なのかなと、微力ながらよい社会のためになっていれば嬉しいです。
ー現在のお仕事で「日藝」時代の学びや経験から得られた能力などがあれば教えてください。
私の通っていた演劇学科では「普通」という感覚があまりなかったように思います。誰かに無理に合わせるということもなかったので、意見がバラけることも多かったですが、その都度否定するのではなく質問し合う。NHKでは多様な価値観や志向の方々に取材させていただくことが多いので、そのような時に日藝の時に得た感覚が役に立っているように思います。
ーこれから受験を考えている高校生に,日藝をお勧めする(としたら)一言をお願いします。
実習や設備が充実していることと卒業後も続く人脈が出来るところ、これまで何度も仕事で日藝の仲間に助けてもらっています。卒業生を通じて今でも新たな出会いがありとても心強いです。
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