戦火の中の人々に寄り添い、ニュース報道からは見えない戦争被害に迫る フリージャーナリスト・綿井健陽さん(放送学科出身)

取材中の綿井さん/映画『イラク チグリスに浮かぶ平和』より

2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、すでに100日を超えています。ウクライナ東部の被害は激化し、民間人犠牲者も後を絶ちません。3月中旬にウクライナに入り首都キーウを拠点に取材を進め、テレビ、ラジオ、インターネットなどを通じて、現地から取材報告を行った綿井健陽さん(日本大学芸術学部放送学科卒)は、フリージャーナリストとして数々の戦地を取材してきました。

主な経歴
アジアプレス・インターナショナル所属。フリージャーナリストとして、スリランカ民族紛争、東ティモール独立戦争、インドネシア紛争、イラク戦争など数々の国際紛争を取材。イラク戦争報道でへ「ボーン・上田記念国際記者賞」特別賞、「ギャラクシー賞」報道活動部門、「日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞」大賞などを受賞している。

戦火に生きる家族を通し戦争の意味を問う

2003年3月に始まったイラク戦争では、米軍の侵攻が始まる前からイラクに入って取材を開始、約1年半かけて記録した映像は、ドキュメンタリー映画『リトルバーズ 〜イラク 戦火の家族たち〜』として2005年に発表されました。空爆で3人の子どもを奪われた家族、クラスター爆弾で右目を負傷した少女などを中心に、戦火の中で懸命に生きる家族を丹念に描きながら戦争の意味を問いかけています。綿井さんは、常に戦火の中の人々(被害者)の視点から取材を行い、被害者に寄り添いながら、ニュース報道からは見えない戦争被害に迫ろうとしています。

戦地を取材する意味

今回のウクライナ取材についても、「ジャーナリストの危険な状況と市民の置かれている状況は連動する。メディアの大小にかかわらず、さまざまなジャーナリストが取材することに意味がある」と多様な視点で伝えていくことの重要性を語っておられます。

ドキュメンタリー『リトルバーズ 〜イラク 戦火の家族たち〜』(2005年)
その後のイラクを10年追い続け、2003年に出会った家族や市民を見つめ続けたドキュメンタリー『イラク チグリスに浮かぶ平和』(2014年)
放送学科
鈴木 康弘
日本大学芸術学部放送学科教授。1958年生、京都市出身。専門は映像演出および映像作品制作。研究領域はドキュメンタリーやテレビドラマの演出。ドキュメンタリー作品に『秘境の村のくらし〜パキスタン・シムシャール村〜』(NHK)、『道と電気が変えた村の風景〜秘境の村は近代化をどう受け入れるか〜』、『カンテムスファミリー その成功と秘密に迫る』など多数。練馬区情報教育推進事業「中学生のための情報番組制作ワークショップ」を2010年より続けている。ワークショップの代表、指導講師を務める。
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