舞台上で自らを問う

あなたは誰?

 2021年度の演劇学科オープンキャンパスで、ある教員が来場者に以下のようなことを伝えました。

劇場は「問い」の場所です。「あなたは誰?」と問い、また問われています。

「私は私、あなたはあなた」「いやそうじゃない、あなたは誰?」

見えているもの、見せられたもの、もしくは見せつけられたものに動揺している、もしくは疑っているのです。それはつまり、そこにあるものを認識し、存在を認めたということです。劇場はそのような意味で「問い」の場所なんです。

 世の中にはさまざまな価値観があります。時代を遡ると多様な価値観を肯定し合うことが認められない時代がありました。そんな時代にも劇場は存在し、「あなたは誰?」と問い合っていたことに、私は劇場に恋するものとして誇りを感じます。

 「多様な文化が混在する場所には必ず豊かな劇場文化が存在する」と学生時代に教えられました。当時はあまり響かない言葉でしたが、20年以上経って私はこの言葉に希望をもっています。

 社会は大きく変化を起こしながら新たな局面へと向かっています。芸術学部にある中ホールという劇場が、日本の劇場文化を支える多くの人材を世に送り出す場所になることを想像し、日々学生と向き合っています。

総合実習   

演劇基礎演習

演劇学科
山口 英峰
日本大学芸術学部教授 日本大学芸術学部演劇学科卒,政策研究大学院大学政策研究科公共政策プログラム文化政策コース修了。 専門は舞台芸術におけるプロダクションマネジメント・公共劇場を中心とした劇場管理運営 2010年から2014年までKAAT神奈川芸術劇場舞台技術課に勤務。 多くの演出家,振付家の作品創造に参加。 近年は劇場の公共文化施設としての役割や劇場の持続的な活動に向けた就労環境の改善に関する研究を遂行中。
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