失われつつある「間」

授業動画はYouTubeを利用することが多い

 オンライン授業という言葉がやってきて、2020年大学教員のYouTuber化が進んだ。オンライン授業とは?教員間で話したところ、どうやらパソコンに向かって授業をするらしい、学生は自宅などそれぞれ自由な場所から同じようにパソコンを利用して授業を受けるらしい、ということがわかった。講義科目だけではなく、実習授業もオンライン。それは実習ではないだろう…。

 そんなことも言っていられなかった。何より大学生活を楽しみにしていた新入生が不憫だった。少しでも楽しめるようにと教員は工夫を凝らす。資料映像を撮影し、編集し、動画配信サイトYouTubeへアップロード。アドレスをグーグルクラスルームで告知。授業時間に受講者が視聴。その後説明など。

 学生のカメラは基本的にオフ。アイコンに向かって話すことに慣れてしまった時は自分の職業について考えた。でもそれよりもっと学生のことを考えた、寂しかったと思う。

 寂しさのためか、結果をすぐに知りたいのか、多くの場合学生は授業用資料動画を再生速度を上げて視聴するらしい。30分の動画は1.5倍速で再生すると20分で見終わる。

 教員は授業において意識的に「間」を取る。この「間」が授業の流れを作るのである。倍速で見ると意識的な間が意図せぬ「間」となる。伝えたいことが形を変えるのである。大先輩の教員がオンライン授業実施の告知がされた際、「授業は臨場の芸術、私には理解できない」と一つの決断をしたことが忘れられない。

 コロナが教育の現場に与えた影響は他業種より大きいと言えるだろう。それでも繋がりたいという思いは芸術創作の推進力となったと感じている。若者の創造性にはいつも驚かされる。

自主創造の基礎-全学共通教育科目

舞台技術研究Ⅰ- 他学科公開科目

演劇学科
山口 英峰
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