アンサンブルの本当の心地よさ、体験したことありますか?

オーストラリア、メルボルンで開催されたパフォーマンスサイエンス学会でのポスター発表

毎年やってくるアンサンブルコンテスト。今年こそ金賞をねらってる高校も多いはず。

けれども日藝で習得するアンサンブルは、金賞の感動よりももっと鳥肌ものの体験ができるかもしれません。

多様性(ダイバーシティ)という言葉がはやり出したのは、私自身が大学生の頃でそれぞれの人格を平等に認めるだけでなく、価値観の多様化が進んでいった。そして、私がアンサンブルの魅力に取り憑かれたのは日藝の「室内楽」の授業を受けてからで、同時期だったと記憶している。
あれは、室内楽の殿堂と謳われたカザルスホールにて演奏をさせていただいた時のこと。編成は金管5重奏。信頼しあった仲間とのすばらしい時間。眩しい照明に、息を呑むほどの緊張感の中、感じるのはメンバーのワクワクとした感情と興奮。まるで美しいレースの布がひらひらと翻っているよう。今思えば、ゾーンの状態だったと思う。

さて、皆さんは演奏中にこのゾーンの体験をしたことがありますか?
小編成のアンサンブルには指揮者は存在しません。加えて、演奏中は音声を介した会話を交わすことはできません。この状況下ですばらしいと言える演奏をするのは難しいことなのです。
今までご縁があった団体の練習法のほとんどは、あらかじめテンポや音量のバランスなどを打ち合せて音楽を整え、それを本番時に再現しようと何度も何度も練習を繰り返すのが一般的なようです。
もちろん、この基本的な練習法は必要不可欠ですが、もう一歩先の世界に踏み込んでみませんか?
メンバーそれぞれの多様性を尊重したアンサンブルを目指せたら、音楽の可能性が広がると思いませんか?
アンサンブル時に本領を発揮させるべき能力の一つが「暗黙知」の活用です。
「暗黙知」を提唱したポランニーは「私たちは、言葉にできるより多くのことを知ることができる」と言っています。
演奏における暗黙知とは「どうもこんなことになっているな」と瞬時に感じ、「じゃあ、私はこう演奏するね」と自身の演奏を適応させるのです。
「あ・うん」の呼吸に近い感覚かもしれません。なので私の室内楽の授業では、簡単に言うと演奏中は音声的言語が使えないから、いくつかの方法を使ってテレパシーを送り合えるようにするのです。
室内楽による音楽づくりは仲間の多様性を感じ、認め、生かし、「自主創造」ならぬ膨大な知識の蓄積を目指す「知識創造」によるたくさんの可能性を秘めた音楽です。

音楽学科
竹田 香子
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