外国語は多様性のために必要?

 皆さんは、多様性という言葉を聞いてどのようなイメージを思い浮かべますか?さまざまな出身国、母語、母国語、生まれ育った国、両親の文化的アイデンティティ、宗教、民族、人種、性別、年齢の人々が集うとき、そこには多様性が生まれるように思いますよね。いやでも、日本人には多様性という言葉は合わないですよって?いやいや、ちょっと待ってください。じゃあ、「日本人」って何なのでしょう?フィリピンからやってきて20年間日本で働いているパミは、日本語をペラペラに話します。アニカは、「ドイツ人」と「日本人」の両親に育てられ、幼い頃はスイスで、中学生からは日本で暮らしています。どうでしょう。だんだん日本人の定義なんて、できなくなってきましたよね?日芸にもいろんな文化的バックグラウンドをもつ人々が集っています。皆さんの隣に座っている友人は、自分とは異なる「他者」なのです。多様な「他者」と生きていくためには、お互いのことをまずは理解しようとしなければなりませんよね。
 実は、芸術教養課程の諸言語の授業では、多様性についてもっと考えてもらいたいという想いをもちながら授業を行っている先生も少なくないのです。なぜ外国語学習で?と思うかもしれませんね。それは外国語の授業が、異国の文化、つまり異なる他者のものの考え方や見方を学ぶ機会になるからなんです。普段私たちが常識のように思っている世界の見方を覆してくれるのが、異国の言語や習慣、文化です。つまり、外国語学習は、新たなものの見方、他者理解のための最初の一歩となるわけです。これこそが創作活動、そしてアーティストとなるための第一歩でもありますよね。日芸では、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、中国語、さらには韓国語やスペイン語といったさまざまな外国語の授業を受けることができます。もちろん、ひとことで英語と言ったって、イギリス英語やアメリカ英語に限らず、世界各国から来たさまざまな文化的背景をもった人々の話す英語が存在するわけですけど。こうしてみると、さまざまな言語を学ぶことと、人間の多様なあり方の理解とが結びついているということがわかりますよね。
 みなさん、日藝でぜひ「自分とは異なるもの」への眼差しを培っていきましょう!そうして「異なるもの」を理解して初めて、自分のことも本当に理解することができるのですから。

授業:外国語、芸術特殊研究(大学院)

芸術教養課程
鈴木 優
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