写真学科における「陰キャ」とは?

「陰キャ」というとネガティブなイメージが付きまといがちだが、本当にそうなのだろうか?

 日芸にも「陽キャ」の学科と「陰キャ」の学科があるのではないだろうか。「陽キャ」の学科は多人数でチームを組んで制作していくような学科である。一方「陰キャ」の学科は一人で自分の世界を掘り下げて表現していく学科と言えるかもしれない。そのような意味では写真学科はどちらかといえば「陰キャ」的な要素が多い学科に属すると言えるだろう。
 人物撮影やチームを組んでのスタジオ撮影など複数の人間で行う撮影もあるが、撮影からプリント、画像処理など、写真は一人でできる作業がほとんどである。だからこそ妥協なく自分の世界を表現できる手段であると言えるかもしれない。そのように一人での作業が多い写真学科の中でも、フィルム撮影に伴う暗室作業は一人で「暗室」の中で行うことから「陰キャ」的作業の最たるものと言えるのではないだろうか。
 暗室作業ではセーフライト(安全光)とよばれる赤い薄暗い照明の下、一人で暗室にこもって納得がいくまで黙々と手作業を繰り返す。自分の作品制作の時には、イヤホンなどで音楽を聴きながら完全に自分の世界に没入して作業することもある。暗室での作業、特に現像液の中で印画紙からフワッと浮き上がるように画像が出てくる魔法のような瞬間が好きで、ひたすら一人で暗室にこもって、学校では授業以外は暗室にいるという学生もいる。
 「陰キャ」は実は他人の目を気にせず、ひたすら自分の世界を追求することができる豊かな世界なのかもしれない。

関連授業:写真技術Ⅰ、写真技術Ⅱ、写真技術Ⅲ

写真学科
佐藤 英裕
"佐藤 英裕 (さとう ひでひろ)日本大学芸術学部教授。専門は現代写真・写真理論。具体的には主に近・現代作品を対象とした、受容の側面からの写真という表現形式の考察、及びその実践としての創作活動。日本写真芸術学会理事・学会誌編集委員。"
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