


FITSとは?
シビウ国際演劇祭(Festival International de Teatru de la Sibiu, 通称FITS)はルーマニア・シビウ市内で開催される国際演劇祭です。イギリスのエディンバラ、フランスのアヴィニョンと並び、世界三大演劇祭の一つにも数えられます。1994年に始まった演劇祭は、今年で33回目を迎えました。10日間のあいだ、演劇、ダンス、サーカス、音楽、インスタレーションなど、さまざまな舞台芸術が屋内外を問わず繰り広げられます。毎年異なるテーマが設けられており、今年のテーマは「SOUL」でした。演劇学科は2024年に参加へ初チャレンジをし、見事選出をされ出場。今回で3年連続の作品上演を果たしました。


上演作品
本年、上演したのは現3年生の戸塚愛実さん作『You From Old Stars』でした。演出は教員の中野成樹がつとめました。隕石被害により荒廃した近未来の地球・日本を発電をキーワードに紡いだ作品です。元々は昨年の日芸祭で戸塚さん自身の演出により上演された『ここは江古田だ、カンパネルラ』を、シビウ参加へチャレンジするために書き換えたものです。本作品は、FITS「シビウ国際大学演劇祭」の演目として上演され、6月25日にルチアンブルガ大学内のホールにて計2公演を実施。約280名の観客を動員しました。


日本にて
今回のシビウ・チャレンジのための上演カンパニーが始動したのは昨年11月。12月にはキャスト・スタッフの学内選考を実施。オーディション・書類選考を通過した9名の学生と、教職員3名を含めた、12名のカンパニーが結成されました。1月にフェスティバル選考用の映像撮影を行い、FITSに提出。3月に無事通過の知らせがあると、皆は大喜び。いよいよ、パスポートや航空券の手配が始まります。6月に入り本格的に稽古を開始。スタッフもフェスティバルのスタッフと図面やデザインのことをメールでやり取りします。持ち込むことが難しい大道具は現地での手配が必要になります。今回の作品になくてはならないスタンド付きの自転車はヨーロッパではあまり普及していません。自転車自体はありますが、自立式のスタンドがどうしても見つからない。結果、現地に行ってみるとFITSスタッフが自力で溶接してスタンドを作ってくれていました。ただただ感謝です。


ルーマニアにて
6月23日に東京を出発し、飛行機と車を乗り継ぎ、翌24日にシビウに到着。本当に丸24時間以上かかります。とはいえ、公演は翌日です。長時間の移動で固くなった体をすぐさまほぐし、上演に備えます。そして、確認の稽古とテクニカルの確認。ここで一つ問題が。お願いしていた自転車のサドルがヨーロッパ仕様で日本人には高すぎることが判明。安全を確保するため、現地スタッフに英語で相談。皆の工夫のおかげでなんとか乗れる高さになりました。公演当日は、3時間弱という短い仕込みを経てて、テクニカルスタッフは皆ヘロヘロです。しかし、迎える本番、弱音を吐いている場合ではありません。21時と23時という遅い時間ながら、会場には多くのお客様が。当たり前ですが知り合いは一人もいません。不安と期待の本番。上演後には多くのお客様がスタンディングオベーションをしてくださいました。嬉しさのあまり、舞台上で泣き出す役者も。さらに、終演後には、感想を直に伝えてくれる人も沢山いました。
日本に戻って
参加者たちと話すのは「あれは何だったのだろう?」ということ。なんだか皆ぼんやりとした顔をしています。それほど、日本とヨーロッパの演劇祭では芸術のあり方の状況は違っていました。あの日の会場の熱気を思い出し、「フェスティバルという
お祭りだったから?」「ヨーロッパの観客はやっぱり芸術鑑賞の目が肥えている?」「わざわざ日本から来たから歓迎してくれたんじゃない?」などなどの感想があがります。きっとどれも正解でどれも不正解でしょう。芸術に与えられた力と使命をまっとうすることは今の日本では大変な労力が必要です。それでも、できることをできる範囲ではじめるしかないのです。できることをできる範囲でやる。そこに大小はありません。優劣もありません。ただ芸術を時代を共に過ごす覚悟だけが必要なのかもしれません。



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