在校生
2022年度文芸学科入学
黒木 千紘
文芸学科
総合型選抜 で受験

日本大学芸術学部へ入学された動機は?

私が初めて日藝の存在を知ったのは高校3年生の5月か6月頃で、タイミングとしてはかなり遅めです。当時受験生だった私は、どこの大学、学部を第一志望にするかを決めかねていました。元々国語が得意だったのでそれに関連したところにいくつか目星を付けてはいましたが、勉強のモチベーションになるような、自分の中で一番に惹かれるものが見つかっていませんでした。

そんな中、誰だったのかは覚えていないのですが、「創作が好きなら日藝もいいんじゃない」とある時ぽろっと言われて。早速調べてみると、これが衝撃でした。私は昔から読書に加えて文章を書くことが好きで、高校では文芸部に入部して仲間と創作活動に励んでいました。けれど大学での学問というのはあくまで「聞く」「研究する」ことが主だと思っていたので、自分の好きな「書く」ことを軸にできる学部はないとずっと認識していたのです。それに高校の文芸部は学校の中でとてもマイナーな部活で、全学年を合わせても両手で数えられるほどの部員しかいませんでした。だからこそ文芸創作をする人達の集まる学科が存在することにも驚きました。

文芸学科を知った次の瞬間にはもう自分の方向性が定まっていたような、日藝を受験することに決めた動機はそんな勢いのあるものだったと記憶しています。

高校時代、文芸部で歌会を行っている様子。

高校時代、文芸部で歌会を行っている様子。

総合型選抜を選んだ理由は?

一般選抜の前に合格のチャンスを一回分多く得られるという点。また高校の文芸部の活動でいくつか賞をいただいていたので、自分のこれまでの頑張りを活かせる入試方法だという点から、総合型選抜を選びました。

エントリーシートを記入するにあたって注意した点は?

各項目の質問へ的確に答えられているか、無駄な文章はないか、説得力のあるものになっているか。まずは基本的な部分を、国語科の担当で、文芸部の顧問の先生と一緒に隅々までチェックをしました。それ以外で意識していたのは、自分についてをできる限り赤裸々に書くことです。書類審査を通過しなければ作品試験も面接も受けることができないので、最初の段階、この文章だけで「私」というものを出し尽くさなければと思っていました。

エントリーシートの「あなたについてを自由に表現してください」という項目には、小学校から高校に至るまで、私が成長する過程での挫折を、そしてそこから今どんな思いで文芸創作と向き合おうとしているのかを、自分自身と対話するような感覚でひたすらに書き綴りました。

専門試験の内容は?また困難な点は?

180分、3200字以内で作文または小論文を書くという内容でした。
私は作文を選んだのですが、その場ですぐ物語を組み立てることは苦手だったので、親、友達、塾の先生、周りの人にお題を出してもらい何度も練習を繰り返しました。180分というのは、単に文を書く時間として考えれば充分です。

しかし、作品として面白いものになっているか、お題の本質に沿ったものになっているか、この3200字で自分を出し切れているか。納得のいくものを時間内に完成させるのは考えていたよりもずっと難しいことでした。いいアイデアが思いつかないまま時間だけが経ってゆくときの焦燥感は今でも覚えています。けれども180分のタイマーをセットして原稿用紙とにらめっこをするあの時間は、多忙な受験期の最中に自分を見つめることのできる、貴重な機会だったと思っています。

総合型選抜は「自己アピール」が大事だと思いますが、どのような点に気をつかいましたか?

総合型選抜全体を通して、嫌味なくらい良い自分も悪い自分も出していこう、という気概でいるようにしていました。面接ではエントリーシートの時と同じく自分の短所は包み隠さず伝え、けれどその分何ができるのかというところまでしっかり面接の先生の目を見て話せるようにしました。作文試験でも、あっと言わせるようなストーリーは思い付けなくても、その代わり登場人物達の感情の機微を丁寧に書くことを意識したり。等身大の自分、粗削りの自分をぶつければ、「自己アピール」につながる個性というのはおのずと浮かび上がってくるような気がします。

総合型選抜を受験しようと考えている受験生にメッセージをお願いします。

書類審査、作文試験、面接とそれぞれの対策を満足に講じるのは大変でした。しかしこれまでに創作で成果を挙げている人はもちろん、日藝への熱意が人一倍あるよという人にはぜひ挑戦してみてもらいたいです。

現在学んでいることは?

普段の創作は詩や俳句のような韻文が中心なのですが、授業では編集、メディア、また憲法、考古学などの教養科目に至るまで、様々なことを学んでいます。現在受講しているものの中では、主に金子みすゞについての理解を深める「児童文学論」がお気に入りです。金子みすゞの生涯から表現の本意を汲み取ったり、先日の授業では「どうしてこの助詞を使ったのだと思うか」といった細かい言葉の観点からも詩を読み解きました。

「日藝らしさ」を感じたという点では、「エッセイ研究」も魅力的です。これはどの学科に所属していても履修をすることができるので、毎週様々な学科の学生達が教室に集まります。最近では岸本佐知子さんのエッセイ『夏』を朗読する時間があったのですが、放送学科の人の、その発声や間の取り方の上手さはさすがだなと思いました。個性豊かな他学科の学生との交流は、芸術学部ならではだと感じています。

1年生の時のゼミ。ゼミ誌が完成し、皆で一段落している場面。

1年生の時のゼミ。ゼミ誌が完成し、皆で一段落している場面。

「DTP演習」で、見開きの誌面をつくる課題に取り組んでいる様子。

「DTP演習」で、見開きの誌面をつくる課題に取り組んでいる様子。

高校生のうちにやっておけば良かったなと思うことは?

主に創作しているの短歌、俳句について、高校時代からもっと知識をつけておけば良かった、学校行事で大きな役職に挑戦してみれば良かっただとか、振り返れば、後悔していることはいくらでもあります。

ただあの時の私も、私なりに進路に、自分自身に悩み、精一杯「高校生」をしていたのだと今では思います。今興味があるのに手を出せずにいるものがあるなら、すぐにでも行動に移してみてほしいです。何かを始めるのに遅いことはないけれど、何かが既にあるのにそれを先延ばしにする理由はない、というのを、最近思っています。

作文試験に備えて書いた短い小説たち。

作文試験に備えて書いた短い小説たち。

学生生活の中で印象に残っていることをお聞かせください。

授業の話になりますが、1年生の頃に受講していた「原典講読」がとても印象に残っています。

宮沢賢治の作品、その中でも『銀河鉄道の夜』を主に取り扱う、これもどの学科でも履修のできる科目です。秋に「小説を読んだうえで、自分なりの方法で『銀河鉄道の夜』を表現する」という課題が出されたのですが、この時の皆の創作物がどれも独創的で、正に目から鱗でした。音楽学科の受講生の、あるワンシーンから着想を得たという曲や映画学科の人のショートムービー、これはどこの学科だったか思い出せませんが、鉄道の走る夜空をイメージしてゼリーを作ってきた人までいました。ある時は詩の朗読を聞き、またある時は教室を暗くして映像を映し、ある時はスピーカーから流れる音楽に耳を傾ける。ひとつの小説から、ここまで多岐にわたる表現法が、そして創造が生まれるのだと感銘を受けたのを覚えています。

これから受験を考えている高校生に日藝をお勧めするポイントは?

日藝のどこまでも自由な校風は、人によって時に孤独を感じさせることもあるかもしれません。けれど必ず、そういったことも含めてこの先の糧となるものを得られる学部だと思っています。偉そうなことを言えた立場ではありませんが、少しでも興味を持ったなら、どうか日藝の扉を叩いてみてください。

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