撮影:外山文治

人を喜ばせる仕事がしたいと気づいた先に辿り着いた役者という仕事。
日藝の数々の出会いが自分の糧に。

板橋 駿谷

一番古い記憶はおじいちゃんを爆笑させたこと。
人を喜ばせる仕事がしたいんだと気づいた先にあった
役者という職業。

中学に入った時は、遠洋漁業のマグロ漁師になろうと思っていました。
海って男のロマンだなと思い、なろうと決めていたものの、踏みとどまりながら高校1年になっていました。全寮制の中高一貫校に通っていて、進学校といえば進学校だったので「この成績だと行きたい大学に行けないぞ」と言われていました。アインシュタインは発明のアイディアをトイレで考えついたというから、ふと、トイレで将来の事を考えてみたんです。

子どもの頃から振り返ってみるとおじいちゃんやその友人の前で、コロッケさんのものまねをやって爆笑させていた3歳の頃の記憶が蘇り、「あ、俺は人を喜ばせる仕事がしたいんだな」と思いました。そして、10歳の頃、授業で朗読をしたら先生に褒められて、先生に「これで仕事になることはないですか。お金を稼げることはないですか?」と聞いたら、「声優があるよ」と言われ、声優という仕事を知った・・・。

「そうだ! 今、一番現実的に俺がやりたいことは、多分声優だ!」「あ、でもちょっと待てよ。声優って顔出ないよな?」「俺目立ちたがり屋だからなー。」と思った瞬間にバーンと雷落ちてきたんですよ。「役者だ!」って。で、そこから、なりたい職業は役者と心に決めました。

高校時代

30秒で終わった進路面談。役者になりたいと答えたら、
先生から「それどうやってなるの?」と聞かれて。

先生に「お前将来どうすんだ」と聞かれ、「役者になりたい」と答えたら「医者になるには医学部に行けばいい。だけど、役者のなり方は先生わかんないから」「それってどうやってなるの?」と逆に聞かれて。「父親から、役者になりたいなら日藝だと言われた」と答えたら、先生からは「頑張れ」とだけ言われ、30秒ぐらいで進路面談が終わりました。

日藝に入学するために一浪しました。落ちたと知った時から、毎日 10 時間勉強をして、やっと演劇学科の演技コースに合格しました。大学に入学してからは、明けても暮れても芝居ばかりをやってました。それ以外はラグビー部だったのでラグビーだけです。

授業で一番記憶に残っているのは、総合実習。みんなで舞台を作る、そしてそれをきちんと発表する。総合実習には二つのパターンがあり、一つは学生主導で演出するパターン、もう一つはプロの人を呼んで演出してもらうパターン。大学3 年の時に学生主導の方を選びました。理由は仲が良かった子が演出をやると言ってたので、「面白そうじゃん」とただそれだけの理由でした。そこで補佐として先生が入ってくれて、その方が宮竹先生でした。

宮竹先生にはめちゃくちゃ怒られました。稽古が本格的に始まったその瞬間から、全部ダメ出しで。でも本当に真っ当すぎるぐらい真っ当な事で怒られていたのは分かっていました。後から仲良くなって宮竹先生とお芝居の話をするのが楽しくなって、今ではいい思い出です。岩松先生の授業も刺激的でした。今でも現場で岩松さんに会うと「先生!」と言ってしまいます。

狂言の石田先生は、めちゃくちゃ怖かったけど、古典に対して自分が勝手な既成概念を作っている事に気づかせて下さいました。プレイバックシアターの授業で学んだ事をベースに、今では自分が「さんぴん」という演劇団体を立ち上げて、活動しています。洋舞コースの授業も受けていて、発表にも出させてもらえたのは嬉しかったです。洋舞の先生達の色の濃さが最高でした!

どんな人生も物語があって、あなたが主人公ですよ。
と伝えたいなと。

役者以外に面白いと思える仕事が無くて、一度「これだ!」と決めると突っ走ってしまう性格で、そのまま突っ走って来ました。芝居を観た人のお腹をいっぱいにすることはできないけれど、お腹をいっぱいにするための活力を与える事は出来る、と思っています。

「さんぴん」という演劇団体では、日本各地に行ってそこに住む人にインタビューをして、その話を基に舞台上で演じ、その人へプレゼントをする活動をしています。今は自己肯定感が低い人が本当に多いので、どんな人生も物語があって、あなたが主人公ですよ、と伝えたい。

今の芝居のベースとなった日藝での数々の出会い。

「さんぴん」は日藝で受けたプレイバックシアターが元になっていますし、宮竹先生に言われたアイデアを考えるという事をしているし、藤崎先生に言われた「芝居は人間関係の上に人間関係を構築する」という言葉を大切にして、稽古場や撮影の現場での振る舞いに気をつけています。洋舞コースで習った動きの意味や、岩松先生が教えてくれた「どこにドラマがあるか?」ということ、石田先生の古典も現代劇も変わらないということも考えてやってます。芝居のベースは日藝でできていると言ったら言い過ぎですかね。

オルタナティブ旅芸人チーム「さんぴん」左から 福原冠さん 永島敬三さん 北尾亘さん 板橋駿谷
 撮影:朝岡英輔

(※職業・勤務先は、取材当時のものです)

板橋駿谷 プロフィール
板橋 駿谷 いたばし しゅんや
1984年生まれ、福島県出身。「ロロ」、「さんぴん」に所属し、舞台・映画・TV・CMと幅広い分野で活躍。特技のラップを活かし『オイディプスREXXX』では作詞・ラップ指導で第26回読売演劇大賞(優秀スタッフ賞)受賞。近年の主な出演作品に【舞台】『明るい夜に出かけて』、『ジャズ大名』、『最高の家出』【映画】『笑いのカイブツ』【TV】『フェンス』(WOWOW)、『漂流兄妹 ~理科の知識で大脱出!?~』(NHK Eテレ)などがある。

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