好きなことは苦にならない。文学の魅力を多角的に伝え続けたい。

放送学科卒業
野中 咲希

幼少期からあった文学への興味が、
環境の良い日藝への進学に。

本や文学を好きになったことは幼少期にさかのぼります。2歳の頃、祖母の家の近くにあった図書館の「児童室」によく通っていたことが、そのルーツかもしれません。小学生の時はハリーポッターに夢中になり、中学生では電子辞書に入っていた名作を授業中にこっそり読み、太宰治や谷崎潤一郎といった純文学に触れました。

大学進学を考える中で、日藝について書かれた本を読み、「やりたいことをみんながやっている」という雰囲気に強く惹かれました。オープンキャンパスでそのイメージと実際の雰囲気が一致し、日藝への進学を決めました。

日藝での学びは多方面にわたる興味関心を伸ばすことができたと感じており日藝を卒業した後、さらに2年間、大学院で学びました。大学院への進学は、先生方の手厚いサポートがあったことと学ぶチャンスがあるなら活かすべきだという思いからです。4年間通った日藝の環境が良く、さらに専門性を深めたいと思っていました。

研究旅行先で

多角的な企画と広報、そして新しい文学への入口

現在は、神奈川近代文学館で企画運営の業務に携わっています。文学館の運営は全て神奈川文化振興会が行っており、私はその中で総務課として広報のような業務を担当しています。

具体的には展覧会に関連したイベントの立案や広報、フライヤーなど広報印刷物の作成など、幅広い業務に携わっています。神奈川県の文学館ですが、扱うテーマは神奈川だけでなく、文学全般にわたります。

最近では作家を招いての講演会や、一般の方も参加できる連句会(皆で句を繋いで作る会)に携わりました。このように企画から広報、内容決定まで文学に多角的に関わる仕事に従事しています。

企画や広報以外にも、現在携わっている主な業務が二つあります。一つは年に4回、季節ごとに発行する機関紙『神奈川近代文学』の編集です。

神奈川近代文学館展示館入口

『神奈川近代文学』には連載のほか、その時の展覧会に合わせた作家からの寄稿を掲載しています。寄稿者の選定では、展覧会で扱う作家と深い関わりのある方や、過去のインタビュー記事でその作家への好意を公言している方などを、新聞記事やこれまでの知識をもとに探し依頼をします。この選定作業では、大学時代に研究で身につけた国会図書館の利用法や資料の探し方といった「調べる力」が非常に役立っています。

もう一つは、「友の会」の運営です。これは年会費という形で文学館の運営を支援してくださるファンの会です。会員の方々に次の展覧会やイベントの情報をいち早く提供するほか、文学に関連する場所を巡る「文学散歩」といった会員限定イベントも企画しています。特に嬉しい変化として、近年若い世代の参加が増えています。これは文学作品を原作としたアニメ、漫画、ゲームなどがきっかけで興味を持つ方がいるためだと感じています。かつての文豪たちを「推し」として楽しむような、新しい文学への入口が広がっていることを実感しています。

偶然が導いた職人「書簡」への深い興味と、
好きなものに囲まれて仕事をするということ。

卒業後は書籍編集の仕事をしていました。そこを退職し、別業種の仕事を経験していた時期に漠然と文学館や美術館で働きたいと考えていました。文学館の仕事は募集が少ないため、求人が出た時は迷わず応募しました。

文学資料は紙のものが多く、意識して保存をしようと思わなければ後世には残りにくいものです。それらを展示することで、現在の人々と過去の文豪たちがつながり、資料をしっかりと保存することで未来の人々にも届けられること、なにより好きなものに囲まれて興味のある仕事ができることは最大のやりがいです。特に私が惹かれているものは、作家が書いた手紙などの「書簡」です。書簡には作家たちの人間味や生々しい人柄がよく表れていて、読むのが非常に面白いと感じます。

現在の仕事で特に大変だと感じるのは、公共施設として「間違った情報を発信することがあってはならない」という責任感による細部までのファクトチェックや構成作業です。地味な作業ですが、完成した時の達成感は大きく、やりがいにも繋がっています。

イベントなどのフェーダー調整

好奇心の赴くままに、仲間と高め合った日藝での日々。

ゼミでは予算がつき、年に1冊、創作・編集・デザインをチームで手掛ける課題がありました。これにより、本ができるまでの全過程を体感でき、これは現在の仕事にも直結する貴重な経験でした。

日藝は、好きなことに対して、とことん深く掘り下げて探求する人たちがとても多く、自分の考えや思いを遠慮なく語り合える場所です。互いの興味関心を受け止め、刺激し合いながら、好きなことをどんどん好きにさせてくれる環境には本当に感謝をしています。週6日も授業に通うほど忙しかったわけですが、好きなことだったので楽しくて、苦に感じたことは一度もなかったです。

高校生の皆さんの中に、もし進路に迷っている方がいたら文芸学科をお勧めします。文学は歴史や生物など、どんな分野にも繋がっています。だからこそ、興味がどこに広がっても、きっと何かを追求し、形にできる場所だと信じています。

チケットやフライヤーの校正作業

(※職業・勤務先は、取材当時のものです)

野中 咲希 のなか さき
2019年 大学院芸術学研究科 文芸学専攻 修了。
公益財団法人神奈川文学振興会総務課企画普及班職員

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